english
映画祭2005情報

インターナショナル・コンペティション


応募総数:94の国・地域より950作品

(英語題アルファベット順)

 世界中から応募された950作品の中から選ばれた珠玉の15作品。映画祭期間中に一般上映され、審査員によってロバート&フランシス・フラハティ賞ほか各賞が決定される。

審査員
ドミニック・オーヴレイ(フランス、『マルグリット・デュラス、あるがままの彼女』監督)
スー・フレドリック(アメリカ、『シンク・オア・スイム』『回復の見込み』監督)
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)(中国、『世界』監督)
崔洋一(日本、『月はどっちに出ている』監督)
呉乙峰(ウー・イフォン)(台湾、『生命(いのち)』監督)

静かな空間
About a Farm
フィンランド/2005/フィンランド語/カラー/ビデオ/54分
監督:メルヴィ・ユンッコネン Mervi Junkkonen

フィンランドの小さな街にある農場を営んでいた両親は、牧場の牛を売り払い農場の閉鎖を決意する。残された畑も父親の怪我で売却されることに。高校卒業間近な妹の病気、心配するしかない母親。農場を継がずに都会での生活を選んだ妹と監督。押し寄せる時代の波と、家族の日常を映し出しながら、父の撮りためた8mmフィルムを眺め、ひとつの家族の物語をひとつの作品へと昇華させた。本作が長編デビュー作のフィンランド期待の監督によるセルフ・ドキュメンタリー。

先頭

アフリカ・ユナイテッド
Africa United
アイスランド/2005/英語、アイスランド語、他/カラー/ビデオ/82分
監督:オーラフ・デ・フルル・ヨハンネスソン Olaf de Fleur Johannesson

事業に失敗したモロッコ人ジーコが率いるアイスランドのアマチュアサッカーチーム「アフリカ・ユナイテッド」。アフリカからの出稼ぎ労働者や留学生とアイスランド人で構成されたこの多国籍チームの最大の特色は、弱いこと。資金難を乗り越え、雪の中で練習し、仲間割れをも繰り返して、モロッコ、セルビアと転戦するが、サッカーへの愛と勝利は反比例するのか……。弱さに秘密も秘訣もないが、男たちには意地がある。めげない奴らの痛快転戦記。

先頭

水没の前に
Before the Flood
淹沒
中国/2004/北京語/カラー/ビデオ/143分
監督:李一凡(リ・イーファン)、鄢雨(イェン・ユィ) Li Yifan, Yan Yu

2009年完成予定の世界最大の三峡ダム。何百、何千の人々が住居を失い、多くの町が貯水の水位下に沈む。そのひとつ詩人李白で有名な重慶市奉節(フォンジエ)の町にカメラは目を向ける。貯水間近な2002年1月から、住民の最大の関心事である移転問題を軸に、先の生活への不安を抱えた人々の葛藤と逞しさを、次第に移住へ向けて動き出す町の情景と共に描き出す。ひとつの時代の変遷を鋭く捉え、これから編まれてゆく時の流れを予感させる見事な余韻。

※システム環境やWebブラウザによっては表示されない漢字があります。

先頭

生まれなかった映画たち
Cinéma Invisible--The Book
オランダ/2005/オランダ語/カラー、モノクロ/ビデオ/73分
監督:ケース・ヒン Kees Hin

映画誕生100年を記念して出版された、映画化されなかった脚本集『シネマ・インビジブル』を求め書店を訪れた女性をナビゲーターに、未映画化作品10本を100本の中から抜き出し映像化していく。チャップリンやクルーゾー、『地下鉄のザジ』、『戦艦ポチョムキン』などを挿入しながら、遊び心溢れるファンタジー・ドキュメンタリーが誕生した。すべての映画にオマージュを捧げる作品。

先頭

ダーウィンの悪夢
Darwin's Nightmare
オーストリア、ベルギー、フランス/2004/英語、ロシア語、スワヒリ語/カラー/35mm/107分
監督:フーベルト・ザウパー Hubert Sauper

アフリカ最大の湖、ビクトリア湖。1960年代に実験的に放された淡水魚ナイルパーチは200を超える在来種を食べ尽くし湖の主となった。舞台はタンザニア。激変する生態系と共に出現した一大魚産業。片寄った繁栄を支えることでかろうじて成り立つ住民たちの生活は悲惨を極める。蔓延するエイズ、女性たちは娼婦となり、ストリートチルドレンは夜を彷徨う。主にヨーロッパや日本に輸出される白身魚を運んだロシア製おんぼろ飛行機が、往路に運んでくるのはアフリカ内戦向けの武器なのか。人工的食物連鎖が生んだ地獄のような現実にカメラが向き合う。

先頭

ファイナル・ソルーション
Final Solution
インド/2004/ヒンディー語、グジャラート語、英語/カラー/ビデオ/150分
監督:ラケッシュ・シャルマ Rakesh Sharma

2002年インド西部グジャラート州で起こったイスラム教徒の虐殺事件の考察を通じて、インドにおけるヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立を捉える。正統インドを標榜するヒンドゥー政党によるイスラム教徒への圧迫、衝突。ヒンドゥー教徒、イスラム教徒両者の証言により憎悪の形成と増幅が丹念に描かれている。出口の見えない対立構造の中で解決の手がかりを見いだそうとする監督の真摯な姿勢が胸を打つ。

先頭

海岸地
Foreland
オランダ/2005/オランダ語/カラー、モノクロ/35mm/70分
監督:アルベルト・エリンフス、オウジェニー・ヤンセン Albert Elings, Eugenie Jansen

オランダの牧畜と農業の村。人々や動物、木々や河の流れもすべてが豊かでゆったりと流れる。そんな村の光景を7年の年月をかけ解説などをいっさい排してフィルムに刻んだ作品。時には河が氾濫し人々の生活を脅かす。何も変わらないようなこの村にも、やがて開発や変化の兆しがさしてくる。森林が伐採され、かつては中心的産業であったレンガ工場の廃墟も取り壊されてゆき、鉄道の地下トンネルが開通、静かな村も式典の賑わいに包まれる。

先頭

イラク ― ヤシの影で
In the Shadow of the Palms--Iraq
オーストラリア/2005/アラビア語、英語/カラー、モノクロ/ビデオ/90分
監督:ウェイン・コールズ=ジャネス Wayne Coles-Janess

2003年春、イラク攻撃4週間前。アメリカによる攻撃開始が予見されながらも日々の生活に勤しむバクダットの人々。子どもたちにレスリングを熱心に教える元オリンピック代表兼駐車場経営者、カフェでの談義に花を咲かせるおじいさんたち、靴屋のおじさん、大学教授、そして通訳者のパレスティナ人男性……。それぞれが見るイラクと世界に対する考えや立場は異なるが、朗らかであった人々の空気は、爆撃開始後一変する。世界がプロパガンダの嵐にさらされる中で、監督は自分の目で見た「イラク」を伝える。

先頭

ジャスティス
Justice
オランダ、ブラジル/2004/ポルトガル語/カラー/35mm/100分
監督:マリア・アウグスタ・ラモス Maria Augusta Ramos

『私の言いたいことは…』(YIDFF'95アジア百花繚乱)のマリア・ラモス監督新作。リオ・デ・ジャネイロの裁判所や刑務所の内部に向けられた視線は、そこに関わる人や関わらざるを得ない人々の日常を行き来しながら、「正義(ジャスティス)」の周辺を描き出す。裁く者と裁かれる側の厳然たる経済的格差や家庭環境の違い、過密を極める刑務所の深部の空気、犯罪者とされる人とその家族たちの苦悩など、カメラは正義の名の下に“裁くということ”がもたらす有り様にひたすら目を凝らす。

先頭

老いた猫のお引越し
Moving Adult Cats
スウェーデン/2004/スウェーデン語/カラー/ビデオ/58分
監督:ヨハン・ルンドボーグ Johan Lundborg

移動販売車が週に一度通ってくるスウェーデンの田舎町。ひとり暮らしのふたりの老人、彼らの日常にカメラは寄り添う。終の棲家として老人ホームへの移住を決意した90歳のグレタ、周りを雑草が囲む荒れ果てた家で3匹の猫と暮らす79歳のアルベルト。人生を見つめながら自分らしく生きようとするふたりが自然な選択をするまでの微妙な心の揺れ。作者はそれらを注意深く見つめ、人間が必ず辿る老いの問題を繊細に描き出す。

先頭

アンコールの人々
The People of Angkor
フランス/2003/カンボジア語/カラー/ビデオ/90分
監督:リティー・パニュ Rithy Panh

アンコール・ワットを舞台にそこに住む人々や遺跡、観光客たちの情景をひとりの少年を主人公に描いていく。遺跡の石に描かれた物語や呪術的な物語が現在のカンボジアと重なる。まだ残る内戦の痛み、都会と農村の落差、未来を見通せない少年の思いがゆったりとしたリズムと美しい映像で綴られて静かな感動を呼び起こす。これまで本映画祭で上映された『さすらう者たちの地』の絶望、『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』の戦慄、そして『アンコールの人々』の希望。監督は常に祖国カンボジアと向き合い、カンボジアを描き続けている。

先頭

リハーサル
Rehearsals
スウェーデン/2004/スウェーデン語/カラー/35mm/101分
監督:ミハウ・レシチロフスキー Michal Leszczylowski

実際に服役中の囚人3人が公開の舞台で演じるプロジェクト「7:3」。演出家が刑務所に出向いてリハーサルを続ける過程、ネオナチを含んだ囚人たちの証言、実際の公演、3つの映像が複雑に絡み合いひとつの物語になっていく。どこまでが事実でどこまでが台詞なのか、現実と虚構がボーダレスに行き交い、観客を惑わし続ける。スウェーデンのメディアで激しい論争になったこのプロジェクトは、予想もしない方向に向かってゆく。

先頭

ルート181
Route 181--Fragments of a Journey in Palestine-Israel
ベルギー、フランス、イギリス、ドイツ/2003/アラビア語、ヘブライ語/カラー、モノクロ/ビデオ/270分
監督:ミシェル・クレフィ、エイアル・シヴァン Michel Khleifi, Eyal Sivan

2002年夏、2カ月にわたりパレスティナ人ミシェル・クレフィとイスラエル人エイアル・シヴァンは、故郷を南から北まで彼らが名づけた「ルート181」に沿って一緒に旅をする。1947年11月29日パレスティナを二分するため採択された国連決議181条の中で描かれた境界線を辿り、その土地土地に住む様々な背景を持つイスラエルやパレスティナの人々に出会う。彼らの日常生活をフィルムに収めながら、「ルート181」に凝集された過去や現在を話者から巧みに引き出していく。イスラエル・パレスティナのみならず私たちが抱える問題――国家、民族、差別、移民――を照射し、未来を見つめる太い熱脈が波打つ。

先頭

メランコリア 3つの部屋
The 3 Rooms of Melancholia
フィンランド、ドイツ、デンマーク、スウェーデン/2004/ロシア語、チェチェン語、アラビア語、フィンランド語/カラー、モノクロ/35mm/106分
監督:ピルヨ・ホンカサロ Pirjo Honkasalo

チェチェン紛争をめぐる子どもたちの生活を3つの場面から追う。ロシア連邦北西部サンクトペテルブルクの士官学校では幼い子どもたちが軍事教練に明け暮れている。廃墟と化したチェチェン共和国の首都グロズヌイでは親子の生活が引き裂かれ、隣国イングーシ共和国の難民キャンプでは子どもたちが空爆の音に怯えている。見守るように慈しむ眼差しの中に、見据えるべき未来を失った悲惨な状況下で生きる子どもたちの表情が浮かび上がる。

先頭

パレルモの聖女
The Virgin of Palermo
ドイツ、イタリア/2005/イタリア語/モノクロ/35mm/82分
監督:アントニオ・グイーディ Antonio Guidi

イタリアのシチリア島北西部に位置する都市パレルモにはさまざまな文化や宗教を持つ人々が共存している。7月に行われるサンタ・ロザリア祭は、17世紀に町をペストから救ったと伝えられる聖女を讃える町をあげての盛大な祭り。信仰と伝統が町全体に根付き、現在にも受け継がれている。モノクロームで描かれた風情ある町の風景や人々の陽気な表情、優しい音楽。華やいだ祭りの奥にある地域文化の豊かさとおおらかさに心惹かれる。


審査員作品

 『ヴァンダの部屋』などのペドロ・コスタ作品の編集に携わったドミニック・オーヴレイ監督(フランス)のデュラスを描いた『マルグリット・デュラス、あるがままの彼女』、スー・フレドリック監督(アメリカ)の代表作『シンク・オア・スイム』と新作『回復の見込み』、賈樟柯監督(中国)の超リアリスティック・ファンタジー新作『世界』、崔洋一監督が在日のイメージを覆した代表作『月はどっちに出ている』、台湾を代表するドキュメンタリー作家呉乙峰監督の2003年のコンペティション優秀賞作品『生命(いのち)』、以上を上映します。


映画祭2005情報審査員コメントインターナショナル・コンペティション | アジア千波万波 | 日本に生きるということ | 私映画から見えるもの | 雲南映像フォーラム | 「全景」の試み | ニュー・ドックス・ジャパン | その他企画スケジュール会場地図 | チケット | 宿泊・交通情報Q&A