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YIDFF 2007 インターナショナル・コンペティション
旅 ― ポトシへ
ロン・ハヴィリオ 監督インタビュー

自分の作品は絶対にパーソナルでありたい


Q: 29年前に訪れたボリビアを、今回また再び訪れたのはなぜですか?

RH: まず最初にボリビアを訪れたことが、自分の人生にとってとても印象的な体験でした。その後もずっとボリビアに行きたかったのですが、忙しくてできませんでした。前作の『エルサレム断章』を撮り終えてやっと時間ができ、ちょうど2番目の娘も南米に行きたがっていて、ひとりで行くつもりだったのですが、父親としては一緒に行くいい機会だと思いました。

Q: 映画の中で監督と家族が、29年前に撮った写真の人々を探す場面がありましたが、なぜそうしようと思ったのですか?

RH: なぜ彼らを探したかというと、前回ボリビアを訪れとても強烈な印象を受け、たくさんの写真を撮ったのですが、後で見てみると「あれは何?」「これは何?」とわからないことばかりでした。お葬式の写真にしても誰のものかさっぱりわかりませんでした。これは喩えなのですが、立体写真鏡(ステレオスコープ)を片目でのぞくと、平面的に見えて距離感がつかめません。両目で見ることによってやっと立体的に見え、距離感がつかめるようになります。それと同じことで今と昔を併せてやっと今のボリビアが見えてくるのです。

Q: 監督は今回の作品をとても個人的な映画だとおっしゃっています。「自分が抱え込んでいるものを撮っているというよりは自分が鏡になる」とおっしゃっていたように、個人的でありながら映っていない人やその先にまで広がっていく作品だと私は感じました。いろんな人にとってパーソナルだけど鏡になる――そんな作品を撮る時に気をつけていることはありますか?

RH: それは自分の作品の核になる部分で、自分の作品は絶対にパーソナルでありたいのです。人生を深く考えていく上で自分はアーティストであり、男性であり、周りにあるもので作品をつくるからこそパーソナルなものを作っていきたいと思います。そしてこれは矛盾するのですが、作品がパーソナルであればあるほどユニバーサルなものになります。

 前回の作品で資金集めをした時、「これは家族の話でイスラエルから出ていない。ここに住んでる人には馴染みあるものだからおもしろいと思うが、他の国の人が見てもおもしろくないだろう」という批判をよく受けました。けれどそれは違うと思います。なぜならここ山形でも上映され、韓国などでも評価を受けました。すべての世界中の人々は自分の生き方、生活を持っています。他の人の生活を見たいと思うのです。人の生き方というのはどこでも一緒なのです。つまり映画制作の一番の真髄はパーソナルであること。共通する生き方、考え方があるからこそわかってもらえる部分があるのではないでしょうか?

Q: この作品を通し、監督が一番伝えたかったことは何ですか?

RH: それはとても難しいし、危険なことです。ひとつのことを言いたくなるとどんどん視野が狭くなっていってしまいます。人生とはそういうものではなく、いろんなものが複雑に絡み合っています。だから映画もそうありたいのです。この作品でも家族のこと、ボリビアの風景など私が気づかないで、観ている側のほうが気づく何かがあるかもしれません。そういうことを大切にしてほしいのです。

(採録・構成:木室志穂)

インタビュアー:木室志穂、山本昭子/通訳:高橋安以子
写真撮影:横山沙羅/ビデオ撮影:横山沙羅/2007-10-08