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YIDFF 2003 特別招待作品
モロ・ノ・ブラジル
ミカ・カウリスマキ 監督インタビュー

ブラジルにとって音楽は、人々の支え


Q: 来日は何回目ですか?

MK: 今回で3回目です。日本はとても好きですね。日本の巨匠と呼ばれる小津、黒澤はもちろんですが、溝口が大好きなので。それ以外でも、一般的に日本は、フィンランドやブラジルと違うので、とても興味深いです。山形は初めてですが、もちろん「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が評価されているということは知っていました。

Q: 監督の作品はブラジルを舞台にした作品が多いと思いますが、今回「ブラジル音楽」についてのドキュメンタリー作品を作ろうとしたきっかけは?

MK: この作品の最初のアイディアを出したのは僕ではなく、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』をプロデュースした中のひとりです。もちろん僕自身楽しんで作りましたが、もし(制作の)話がなかったら、フィンランド人がブラジル音楽について映画を作るということは、自分では考えられなかったです。

Q: 撮影に入るまでには時間がかかりましたか?

MK: はい、とても長期間準備をしました。撮影を始める1年ほど前に、色々な場所に行き、音楽を勉強しながら基本的な流れや構成はそこで決めました。一番難しかったのは、音楽の選定です。ブラジル音楽は、映画が10本、20本以上も出来るくらい奥が深いので。

Q: では、音楽の選定はどんな基準で?

MK: 僕が最初の段階で決めていたことは、有名なミュージシャンは絶対に撮らないということでした。もちろん、この映画をブラジルのポップミュージックなどを取り入れた、万人受けする作品にも出来たかもしれません。しかし、僕の撮りたかったものは、無名のミュージシャンたちです。この作品はもちろんブラジル音楽についての映画なのですが、同時に、そこに住み、そこで生きている人々の力、実生活のネガティヴな面を音楽によりポジティブな方向に持って行くブラジル人の強さ、また、ブラジル音楽の起源や多種多様な文化について僕は撮りたかったのです。

Q: 作品ではインタビューやナレーションの形式がとられていますが?

MK: 質問は(作品の中で使われて)ないのですが、ミュージシャンの話を聞くということをメインにし、インタビューは自分で行いました。もちろん、カメラの後ろに立ち、絵を撮るということでもよかったのですが、そうすると、とてもパーソナルな映画になり過ぎてしまうと思ったので。ナレーションはブラジルの音楽を全く知らない人々にインフォメーションの役割として、そして自分の色を作品に出したかったので入れました。しかし、極力ナレーションなどの言葉は控えめにし、音楽(の歌詞)自体で、ブラジル音楽のルーツや複雑に重なり合った文化、実際の人々の暮らしなどについて語ってもらおうと考えていました。

Q: ドキュメンタリー映画というジャンルについてはどう考えていますか?

MK: 僕自身、自分はフィクション映画監督だと思っています。僕の作品にはドキュメンタリー形式で作られたフィクション映画の作品も数多くありますが、純粋なドキュメンタリー映画を撮るということは、一個人として作品を作るということなので、フィクション映画を作るということとまた違って面白いですね。

Q: 山形には何を期待していますか?

MK: お酒ですね(笑)。もちろん山形へ行ける事自体、楽しみにしていますが、山形はお酒がおいしいと聞いているので、とても楽しみです。

(採録・構成:岸ユキ)

インタビュアー:岸ユキ、佐藤寛朗
写真撮影:佐藤寛朗/ビデオ撮影:加藤孝信/ 2003-10-06 東京にて