english
YIDFF 2005 アジア千波万波
果ての島
ラーヤ・マーティン 監督インタビュー

果ての島で見つけたもの


Q: イトバヤット島を撮影しようと思ったきっかけはなんですか?

RM: 学生時代、大学の先生からバタネス諸島はとても美しい島々だと聞き、行ってみようと思ったのです。具体的な作品のアイディアはありませんでしたが、素材をたくさん撮ろうと思い、テープをたくさん持って行きました。滞在していた2週間はずっと撮影していて、島から戻ってすぐにその映像をまとめようと思っていましたが、そのままになっていました。卒業後、キドラット・タヒミック監督のもとで2年ほど働いて、その後これを見直してみようと思いました。当時はフィクションしか作っていなかったし、大量のテープを見直すことは大変だと思いましたがやってみました。

Q: 島を撮影してみてどんな発見がありましたか?

RM: 一番印象に残ったのは都会っ子の自分と島の人とでは、人との関わり方がまったく違ったことです。とてもシャイな人たちばかりで、最初はなかなか話してもくれませんでした。もちろん悪気があってのことではなく、知らない人に慣れていないのです。それがイトバヤット島の特徴ですね。島の人がインタビューに応じてくれたのも、自分が島じゅうをうろうろしていたので、しょうがなく話してくれたという感じでした。

Q: 夜に漁をして、自分たちで食べるシーンがありましたが。

RM: はい。基本的に漁というのは、自分たちで食べる分を捕まえに行くという感じで、多少余分に獲れた場合は売ります。獲れたものを一緒に食べさせてもらいましたが、調味料など一切使ってないのにとてもおいしかったです。また、島の人はお酒が好きで、台風の被害があった際に援助物資が届いたら、アルコール類のところにまず列ができるそうです。かと言ってお酒を飲んで暴れるというのはなく、あくまでものんびりとした場所ですが。

Q: 焼畑で種をまくシーンで、たくさんの人が働いていましたが、すべて島の方ですか?

RM: はい。収穫の時期に近所同士で助け合っているのです。手伝ってもらった人は食事でお礼をします。

Q: 文字の書かれた紙切れのカットがいくつかあって、その中でcombinationなどの単語が強調されていましたが、ねらいがあったのですか?

RM: あれは紙タバコを巻いた残骸で、島じゅうに転がっていました。彼らは身近にある本を破いてタバコを巻いているのですが、彼らにとって本というのは読むものではなくて、タバコを巻くために手軽に転がっている紙なのです。そういう彼らの、教育に対する考えみたいなものを表したかったのです。図書館はあるんですけど、本はあまりないし、入っていく人もあまりいないから、本を読む文化が定着していないようです。また、学校も高校まではあるんですけど、大学に行きたい人は、大きな島に行かなければならないんです。特に女の子は高校時代に妊娠して辞めるというケースが多く、若くして子どもを生みます。

Q: 島の暮らしや風土、人々の表情など、とても親しみを感じました。

RM: そうですね。ひとつ表現したかったのは、こういう島でも世界のどのようなところであっても、人間というのは同じような営みをしているのだということです。それぞれの生活があって生き方があっても、同じような問題を抱えていたりします。そういうところをこの作品で見せたいと思いました。

(採録・構成:猪谷美夏)

インタビュアー:猪谷美夏、早坂美津子/通訳:川口陽子
写真撮影:阿部さつき/ビデオ撮影:山口実果/ 2005-10-11