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YIDFF 2005 私映画から見えるもの スイスと日本の一人称ドキュメンタリー
気ままなヤツ
ピーター・リエヒティ 監督インタビュー

何が原動力であるかを発見していく


Q: 煙草をやめようと思ったのが、映画制作のきっかけなのでしょうか?

PL: 自分が映画を作る時はいつも、意図がわからないまま作り始めて、作りながら何が原動力であるかを発見していきます。それが映画を作る時のモチベーションです。ですが具体的な理由はいくつかあります。ひとつ目は、本当に煙草をやめたかったことです。ふたつ目は、徒歩旅行がとても有効であると経験ずみだったことです。今度、煙草をやめようと思った時は、カメラを持って徒歩旅行をしようと決めていたのです。3つ目は、『気ままなヤツ』に取りかかる前に参加したとても大きな劇映画の企画で、「前線にいながら、自分のものではない」という感覚を持って苦労したことです。独立して自由に自分の仕事をしたい、初心に戻りたいという思いが強くなったのです。結果的には、自分の人生のなかばにおいて、自分の根っこ探しをして、再度パイオニアになりたいと思いました。

Q: 歩いている足元の映像を、所々に散りばめたのはなぜですか?

PL: 今回のテーマで難しかったことは、常に観客を引きつけ続けるということでした。テーマの核には、常に歩き続けている存在があります。たまには休憩するが、いつでも移動中であるというリズムと、動きを描きたいと思いました。常に私たちは移動しているという感覚です。

Q: 徒歩旅行で最も印象に残った出会いは?

PL: 私にとって、とても大切なふたりがいます。ひとりはお百姓さんで、もうひとりは「死にたい」と言っていたおばあさんです。おばあさんは素晴らしい人格者でした。撮影後は会わずにいたのですが、100歳近かった彼女の死を新聞で知りました。会いに行かなかったことに、罪の意識を強く感じます。

Q: 次回作は、何か考えていますか?

PL: ちょうど先週に撮影が終わったのは、30日間の音楽のパフォーマンスを撮り続けるという企画です。もうひとつは、日本の小説を映像化することを考えています。

(採録・構成:松本美保)

インタビュアー:松本美保、中島愛/通訳:藤岡朝子
写真撮影:海藤芳正/ビデオ撮影:佐藤寛朗/ 2005-10-08