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YIDFF 2007 インターナショナル・コンペティション
主人公
ジェシカ・ユー 監督インタビュー

自分の人生に起こったこと、
すべてについて責任を引き受ける人たち


Q: 登場人物の4人を、どのようにして見つけたのですか?

JY: 初めから男の人と限っていたわけではありません。何らかの共通性を持っている4人を探しました。それに8カ月かかりました。4人のうちふたりは、私が個人的に知っている人たちでしたので、同意を取りつけるのはそんなに大変ではありませんでしたが、あとのふたりは少し苦労しました。この時点の彼らは、最終的にどのような映画になるのかはわかっていなかったかもしれないけれど、なんとか同意を得ました。

 4人を選定するのに、とにかくドラマチックな人生を過ごしてきて、なんらかの共通点があり、そして話をするのが上手な人たちという条件がありました。しかしながら、あまりに表面的に似通っている人たちでも困ります。

 インターネットや雑誌などあらゆる手段を使って、最終的に200人ぐらいをリサーチしました。そのうち女性は4、5人でした。なぜかというと、何か大きな転換期をむかえるような人生を送ってきた人たちを探す必要があったのですが、たぶん女性の場合はある時にぱたっと変わるというよりは、徐々に変わっていく場合が多いので、このような数になったのだと思います。

 私たちが探していたのは、自分の人生に起こったことすべてについて責任を引き受ける人たちでした。何かを求めて、様々な理由からある道に足を踏み出すのですが、だんだんそれに囚われてしまって、もともと求めていたものを見失ってしまう、というところを描きたかったのです。だんだん狂信的になっていくわけですが、それで終わっている人では困ります。そのあとにやっぱりこれは間違っていると気づいて、もう元の自分には戻れないと悟っている人たちを探しました。

Q: なぜ人形劇を用いたのですか?

JY: 最初は、アニメーションを使って4人の話をリンクさせようかと思いましたが、この作品はエウリピデスの劇に基づいたものです。ギリシャ悲劇を実際に演芸劇場で上演する場合に使う仮面に、私はとても心惹かれました。エウリピデスの時代はいつも仮面を使っていたのです。広い劇場で遠くにいる観客にも、役者が何を表現しているのかがわかるようにする大きな仮面は、効果的に使えるのではないかと思いました。自分自身の感情を反映させるのにとても良い媒体だと思ったのです。

Q: 彼らは躊躇することなく、赤裸々に自分のことを話していますが……。

JY: 彼らは、自分のやったことを受け入れているからこそ話すことができるのではないかと思います。彼らと話し合ってから撮るということはほとんどしていません。巧みに話せる人たちとめぐり逢えたことはとてもラッキーだったと思います。

 ただ、カンフーオタクの男は実は私の夫でして、彼の話は嫌というほど聞いていましたので、内容もだいたいは想像がつきました。それと、元銀行強盗のジョー・ロヤは、彼の友人なのです。それゆえこのふたりに関しては、いかに自然に初めて話すかのようにやってもらうか、ということに気をくばりました。私が質問を書いて渡して、夫は自分の答えをジョー・ロヤに話すというやり方をとりました。妻に何度も何度も同じ話をしている錯覚に陥るといけないからです。このふたりは同時進行で行いましたが、あとのふたりは別々に撮りました。

 4人へ同じような質問をしたら似たような答えが返ってきて、共通の意図が見えてきたので、これは映画になるなと思ったのでした。

(採録・構成:松本美保)

インタビュアー:松本美保/通訳:斉藤新子
写真撮影:山本昭子/2007-10-07