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YIDFF 2015 日本プログラム
THE COCKPIT
三宅唱 監督インタビュー

楽しく、カッコよく、つくる


Q: 正面に設置した固定カメラから、OMSBさんたちの音楽制作を追った映像で、ほぼ全編が構成されていましたが、あの真正面からの構図は、撮影前から浮かんでいたのでしょうか?

MS: 事前にとにかくこれを撮ろう、と決めていたのは1カットだけで、それは正面からのものではありませんでした。前半に登場する、OMSBがMPCを打っている身体の動きを、真横から撮ったカットです。このカットを撮るためにライティングを工夫し、スタンダードのサイズで撮ることを決めました。部屋全体をどう撮るかというのは、現場の段階では、後ろから撮るべきか正面から撮るべきか決めかねていた、というのが正直なところです。現場では、ずっと横に設置したカメラを見ており、正面カメラはほとんど確認していませんでした。持ち帰って、正面からの映像を見て初めて「ああ、ここに全部映っていた」と気づいたのです。

Q: 同じクリエイターとして、彼らにどのような刺激を受けましたか?

MS: 家で編集していると、目の前のPC画面でOMSBが音をつくっている姿を延々と見るわけです。僕はPCで編集するのが嫌いで、やりたくないなあと思いつつも、彼らの音楽を聞くことが楽しいから、ずっとだらだら素材を見ていました。見ているうちに、彼がずっと集中して休まず仕事をしているってことに、ようやく気づいたんです。だんだん鏡を見ているような気分になってきて、まず動きの真似から入りました。首を振ってみたり、キーボードをMPCみたいに叩いてみたり。でも、彼がすごく真面目に仕事をしているから、結局自分も真面目に仕事をしなくちゃな、と。しかも、楽しそうにやってるから僕も楽しくやろう、と。彼の背中を追う感じで、すごくポジティブに編集ができました。

Q: OMSBさんが、録音で何度も失敗してやりなおす姿が印象的でした。

MS: 僕がただあの動きに、現場でも編集でも感動したからなのですが、今は音楽を録音するとき失敗したところをカットして、成功した部分だけ、後でPCで繋げることができますよね。OMSBは間違えると一から全部やり直す、何かそれがすごく正しいことのように感じられたんです。もちろん、どちらのスタイルが良い、悪いという話じゃありませんが。OMSBが今年出したアルバムのリリースライブに行って、リハーサルから立ち会ったんですが、2、3時間あるライブのリハーサルで、彼はその日やる曲を頭から終わりまで全部通してやっていました。それがめちゃくちゃかっこいいな、と思いました。人によって、効率とはほど遠い世界のように感じるかもしれませんが、それでいいんだと思えたのです。

Q: エンドロール直前のOMSBさんの顔のクローズアップについてお聞かせください。

MS: この映画をどうやって終わらせるか、ということはずっと悩みだったんです。あの顔は、それまで録音した曲全体を聞いているときのものなんですが、いい顔だなあと思いました。それまでは、音と映像が同期していて、あのカットで初めてそこから離れます。これが1つの飛躍となって、特殊なカットになったと思います。音楽をつくる、というのは音を「出す」という行為であるのだけれど、同時にそれを「聞く」、聞いてまた次にいくという、ちょっと前の自分を確認して前に進んでいく行為だなと思うんです。それまでは、ずっとつくり続けていて前に進む感じがあったんですけど、一回「聞く」という姿に触れられたかなと思います。

(採録・構成:稲垣晴夏)

インタビュアー:稲垣晴夏、山根裕之
写真撮影:山根裕之/ビデオ撮影:山根裕之/2015-10-02 東京にて