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YIDFF 2017 日本プログラム
BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW Omnibus 2011/2016
前田真二郎(企画)大木裕之 監督、池田泰教 監督、崟利子 監督 インタビュー

不確定さという可能性


Q:BETWEEN YESTERDAY & TOMORROW(以下BYT)は2011年の映画祭で上映されましたが、その際に参加していた監督と、2016年に再び企画を立ち上げようと思った理由は何でしょうか?

前田真二郎(MS): 2011年のBYTについて、当初は、まず3月から1年間、指示書に基づいた映像の撮影を続けてみようと、2012年の3月までという区切りを設けていました。その後、この企画をどのように継続していくかを考えながら、それぞれの監督が自主的に、撮影した作品をWebにアップしていましたが、実際に改めて監督に呼びかけて、ということはしていませんでした。2016年に、前回の上映から5年というタイミングで、BYTの上映企画のお話をいただきました。当然、2011年の作品から選んで上映に臨んでもよかったのですが、これはもしかしたら、いい機会ではないかと。2016年に新作を作ってもらって、2011年のものと合わせるオムニバスも面白いかなと考えました。

Q: 映画を撮るうえで、前提となる指示書が存在する意図は何でしょうか?

MS: BYTは一見、決まった形式のなかで監督それぞれの個性を出していってもらう、というシリーズに見えますが、同じような形のものをたくさん並べたい、ということではありません。「明日、どこどこに行って撮ります」と指示書で宣言され、翌日その場所に撮影をしに行くわけですが、指示書を前提にしなければ、その場所に行くことはなかったかもしれない。指示書どおりに撮影することで、現実が変わる逆転現象が起こることに、私自身は面白みを感じ、指示書に対して期待していました。

Q: 各監督におうかがいします。2011年、2016年と撮影をしてみていかがでしたか?

大木裕之: 僕は、そのときの瞬間を臨機応変に作品にしたいと思っています。自分としては、2011年と2016年の時間の流れが、自分の中ではっきりとはわからないことがありますが、客観的に自分を反射するものとして、過去を振り返ることができるというのは、こういう企画で撮影をしたからこそだと感じています。それは、ありがたいと思います。

崟利子: BYTでは、これまで4作品、すべてをワンカットで撮影しています。これまでの3作品で、自分の中でいったん区切りがありました。これまではカメラを持って動いていましたが、5年を経て、またお誘いを受けた際に、違う作品にしてみようと思い、今回はカメラが動かないように撮影し、どう作品として成り立たせるかを考えました。

池田泰教: これまで3作品撮影しています。2011年に兄を撮影したものが最初で、そのときは自分の家族を撮影するシリーズにしようとは考えていませんでした。その後、また撮影のお話をいただいた際に、兄と父と母の3本のシリーズにしようと頭に浮かびました。2012年に父親を、2016年は母親を撮影しました。今作は劇映画的に見えるようにしました。指示書をひとつの舞台のようにし、照明をたいてカメラの構図も決めて。出てくれた母親はとても緊張していましたが、それがとてもよかったと思っています。

MS: 始めたときはまさか、5年後にもう1回やるとは思っていなかったので、時を経ても成立する企画だということに自分でも驚いています。BYTは良い意味で完結していないなと。指示書による作り方があるということが、もしかしたら、他の方が指示書を基に作る可能性もあるし、もっと後年にこの作品を観て、自分だったらこういう風に撮りたいと思った誰かが作る可能性もある。そういう不確定な状態であるということが、5年前には明確に言葉にできていなかったけれど、今回の上映を経て、改めて確信できました。

(構成:奧山心一朗)

インタビュアー:奧山心一朗、鳥羽梨緒
写真撮影:名畑文草/ビデオ撮影:楠瀬かおり/2017-10-09