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特別招待作品

1000年刻みの日時計 ― 牧野村物語

Magino Village--A Tale

- 日本/1986/日本語/カラー/16mm/222分

監督:小川紳介
撮影:
田村正毅
録音:久保田幸雄、菊地信之
音楽:富樫雅彦
製作:
伏屋博雄
出演:土方巽、宮下順子、田村高廣、河原崎長一郎、石橋蓮司、島田正吾
製作:小川プロダクション
提供:山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー

製作に13年間を費やした小川プロの代表作。このように複雑な形で歴史を描写した映画は、世界映画史上でも比類がない。何世代にもわたって牧野村で伝えられてきた口承の伝統、舞踏、そして架空の劇映画の形をとって再現された歴史。この劇映画では、著名なプロの俳優とまざって、村人たちが自らの先祖を演じている。映画製作者たちは、水田の中の考古発掘現場におもむき、牧野村最古の歴史をも探り出そうとする。本作が村落生活の民族的、精神的神話を崩壊させる冷ややかな作品だという印象を与えないのは、こういった科学的アプローチのおかげだ。米の花の顕微鏡映像は言葉にならない畏怖の念を喚起する。そして大学教授たちが突如として茂みから飛びだし、物語の起源を推測まじりに説明するくだりは、結局は牧野で営み続けられている歴史のリアリティを確認することになるのだ。優れて複雑な本作の時間を全編にわたって刻むのは、収穫の季節のリズムと、山形の空に太陽が描き出す弧である。

阿部マーク・ノーネス
――YIDFF '99 公式カタログより


- 小川紳介

1936年、東京生まれ。1960年、岩波映画製作所と助監督契約を結び、東陽一、岩佐寿弥、黒木和雄、土本典昭らとの勉強会「青の会」に参加。1964年、フリーになる。監督第1作『青年の海』(1966)や『現認報告書』(1967)などを自主制作。全共闘運動の盛り上がりの中で全国の大学、職域などで支持を得た。1968年、小川プロダクションを旗揚げし、三里塚の農村で生活しながら、「三里塚」シリーズ製作に没頭。農民の側に立って映画を作り続けた。1974年、山形県上山市牧野に移り住み、米作りをしながら農村を見続け『ニッポン国古屋敷村』(1982)と本作を発表。1989年、第1回山形国際ドキュメンタリー映画祭発足のための準備委員として奔走、映画祭を成功に導いた。1992年2月7日逝去。


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