- ●ロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)
『鉄西区』(てつにしく)Tie Xi Qu: West of Tracks
-
中国/2003/中国語/カラー/ビデオ/545分
監督:王兵(ワン・ビン)
この作品は審査員ら全員一致で賞を獲得した。軽量の機材を駆使し、その撮影状況や映画言語において、フィルムメーカーとして真に革新的な企画を想像したおそらく初めての作品ではないだろうか。
最低限の機材を持って、監督ひとりのワンマンクルーは、まるで水を得た魚のように映画にしようと選んだ世界に情熱を持って飛び込んだ。そこで監督は生き、交差する100余の人々の生活を捉え、偉大なロシア文学やエミール・ゾラの小説を彷彿させる。併せて映画は諸々の場所、風景、中国の土地を捉え、産業地域の衰退による社会経済の変化やそれに伴う個人の生活への影響を追う。パトスなしに映画はグローバリズムによって進む工場の荒地の悲惨な現状を捉えている。作品を通して、エピソードを経るごとに変化し、成長する監督を我々は目にする。大きな可能性を確信させるひとりの若い監督が審査員らの目に映った。
●山形市長賞(最優秀賞)
『スティーヴィ』Stevie
- アメリカ/2002/英語/カラー/35mm/145分
監督:スティーヴ・ジェイムス
我々審査員はこの映画の登場人物に今回の映画祭で最も心に残る女性たちを見つけたといえる。中でもスティーヴィの婚約者がやがてはおそらくこの映画の真の意味の主役であろう。
そのタイトルにもかかわらず、スティーヴィのかかえる問題は彼独自の問題ではなく、現代社会のシステムの破綻の危機とアメリカ社会が見落としている欠陥を表す兆候なのだと我々は思う。この映画では大人になっても成熟しきれない個人を抱えた家族の危機を通し、ごく普通の郊外に住む白人の下層中流階級の深刻な機能破綻を描いている。
実際画面の中にフィルムメーカーの疑問やためらう姿が表れ、フィルムメーカー自身が直接的かつ個人的に彼が物語るストーリーの中に関わっていることを審査員は評価した。
●優秀賞
『生命(いのち)』Gift of Life
- 台湾/2003/中国語、台湾語/カラー/ビデオ/148分
監督:呉乙峰(ウー・イフォン)
審査員らが強い感銘を受けたのは、突然地震という致命的な自然災害の被害を受けた人々の意識に何千年もの間に培われた哲学が再び噴出し、蘇ってくる感覚をこの現代映画が感じさせたことである。不在なるもの、消失してしまった家、家族、持ち物、被災者らがその現実に向き合い、どうやってこれから生きていくかを彼らが学ぶ中、死者が夢の中に現れ、生き残ったものに語りかける、目に見えない力のリアルな圧力をそこに感じるのである。
またこの映画の「音楽性」にも敬意を表したい。重層に組み込まれた幅のある構造が喪の過程における被災者たちの感情の起伏を適切なリズムで我々に伝える。生への回帰、生の回帰についての希望を感じさせる映画である。
●優秀賞
『S21 クメール・ルージュの虐殺者たち』S21, the Khmer Rouge Killing Machine
- フランス/2002/カンボジア語/カラー/ビデオ/101分
監督:リティー・パニュ
大量虐殺を扱った作品は過去にも多くあったが、おぞましい犯罪の加害者らにこれほどで赤裸々に迫った作品はなかろう。この恐怖の実態を身体と言葉で再現することによって、映画は理解しがたい事実に我々を近づける。普通の人が機械と化してしまい、無感情に良心の呵責もなく人を殺してしまったという事実に。これらの要素が相まって、この作品は「普通の執行人たち」について、彼らの大量殺戮での関わりについての真の教育映画となっている。
●特別賞
『純粋なるもの』Purity
- イスラエル/2002/ヘブライ語、英語/カラー/ビデオ/63分
監督:アナット・ズリア
あくまでもパーソナルな、監督自身のリズムで描かれているこの作品の、その純粋さ、透明感、誠実さに審査員全員が心を打たれた。ここでは声を上げることも力を入れる必要もなく、深刻かつ重要なテーマが優しく穏やかな声によって伝えられるのである。いずれの宗教であっても原理主義と男性的圧力が女性たちの私的な生活に及ぼす衝撃というものをこの映画は表している。