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    草庵の村

    Thatched Cottages on the Enclave
    飞地上的草房

    - 中国/2010/中国語/カラー/Blu-ray(SD)/55分

    監督:孟小為(モン・シャオウェイ)
    撮影:孟小為、高川洲(ガオ・チュアンジョウ)
    製作:柳速(リウ・スー)
    提供:孟小為

    中国・甘粛省、洮坪(タオピン)郷の山村にある集落は、20年程前に人々が移り住んで出来た村だ。朝から晩まで、大人たちは淡々と木を切り、大黄を掘り、それらを売って生活の糧としている。子どもたちは野原を駆け回り、男たちは夜な夜な語らい合う。しかし、この質素で平安な生活も森と共に消えようとしている。村の行く末を案じる彼らの生活を淡々と映すカメラからは、村の人々の日常の生命力がにじみ出る。



    【監督のことば】甘粛省礼(リー)県洮坪にある周囲1キロほどの原生の樺の森は、行政的には宕昌県苟家院(村)に属する飛び地である。20年以上前に、苟家院の4家族がここへ“拌山(バンシャン)”しにやって来た――“拌山”とは荒地を開墾し薬用の植物(大黄)を植えることを指す。現在では30家族以上がここで暮らしている。何年も前に、私は絵を描きにそこへ行ったことがあったが、ちょっと目にしただけで深い印象を持たず、ただ、自然や草葺の家屋が美しく、人文的な色彩に富んでいると感じただけであった。

     2002年、上海の画家村から甘粛省の故郷へ戻った私は、蘭州の写真家である友人の高川洲(ガオ・チュアンジョウ)と、ドキュメンタリーのテーマを求めて、礼県洮坪へ赴き、そこに住む人々の生活状況を深く知ることとなった。私は、撮影を開始する前から、樺の森が以前に比べ少なく、人も以前より少ないことを感じとった。

     撮影は始めから困難を極め、いったん長雨が降るとジープでさえも入っていくことがままならず、しかも、大黄は3年に1度しか収穫することができない。そのため、私は毎年撮影のため上海から戻るたびに、季節ごとの特徴を撮影しようとつとめた。その結果、撮影は3年間に及んだ。撮影後の編集は何度も中断、放置を繰り返し、プロットに満足がいかずに、あきらめてしまおうと思ったことさえあった。最終的に作品は完成し、当初『去兮去兮』とタイトルを付けたが、そこには去りたくないという意味が暗に含まれている。


    - 孟小為(モン・シャオウェイ)

    1962年生まれ。天水師範学院卒業後、油絵とドキュメンタリー映画制作を始める。ドキュメンタリー作品に『The Route of the Long March 』(2006)、『Hemp Paper』(2006)、『Wangxi』 (2009)、『The Road of West』(2011)など。絵画作品は様々な展覧会で展示されている。