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映画祭2005情報

日本に生きるということ:プログラムにあたって


 近年、在日をテーマにした劇映画やドキュメンタリーが非常に目立つようになった。しかし映画の歴史を振り返ると、在日に関する映画は以前からたくさん存在し、多くの在日映画人が活躍してきたことに気付かされる。この特集では映画と在日の関わりを中心に、日本映画のみならず海外の視点から描かれた作品も集め、もうひとつの映画史を検証するものである。今年は韓国・北朝鮮にとって解放60年の記念すべき年であり、日本の戦後60年を考える意味でも重要な年である。こうした作品を一堂に会して見直すことは、正しい歴史を知るためにも有意義なことではないだろうか。

 映画史に登場する日夏英太郎=許泳(ホ・ヨン)、金井成一=金学成(キム・ハクソン)、井上莞=李炳宇(イ・ビョンウ)、宇部敬=金順明(キム・スンミョン)などは在日映画人の一部に過ぎないが、ここでは「最初期の映画人」として彼らに関する作品を集めてみた。

 在日作家による作品はできるだけ網羅し、日本人作家による在日をテーマにした作品も取り揃えた。在日50年を描いた呉徳洙(オ・ドクス)監督による大作『在日』は特別招待作品として上映する。

 また、この映画祭は、故・小川紳介の提唱により特にアジアを視野に入れた映画祭である。小川は生前、山形の大蔵村に嫁いだフィリピン花嫁をテーマにしたドキュメンタリーを準備しテスト撮影を始めていた。92年の「お別れ会」で1度だけ上映されたその未完のフィルムを、小川を偲んで映画祭のオープニングで再び上映することにした。

 日本未公開の作品もできるだけ加えた。韓国映画の『望郷』、『あれがソウルの空だ』、北朝鮮映画の『春の雪どけ』、日本映画では李學仁(イ・ハギン)の『赤いテンギ』である。また日本人が見る機会の少ない総聯映画製作所の劇映画『銀のかんざし』や記録映画、ニュース映画も見逃せない。

 在日とは通常、戦後日本に定住する韓国・朝鮮人を指すが、このプログラムでは幅広い意味で在日を捉えることにした。この映画祭を特徴づけるアジアの視点を重視し、日本人のあり方を問うプログラムづくりを目指したのは言うまでもない。

「日本に生きるということ」コーディネーター 安井喜雄


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