English

ヤマガタ・ラフカット!


助成:国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造恊働助成


 このプログラムは、作品に満たない短い映像を上映し、世界中から映画祭に集う人たちと共に見て、感じ、語り、聞く場を作ることを目的としている。荒々しく削りだした世界の 断片ラフカットを頼りに、制作者、観客、批評家、研究者など、あらゆる立場の人々がジャンルを超えて交わる場から、映像と世界との新しい関わりを模索する試みである。今年はアジアのラフカットも募集し、地元の高校生、大学生が対話の場に参加する。



映画をほどく試み

 「ラフカット」とは、映画や映像作品が完成する前の粗編集版(未完成)の状態を指す言葉です。また、そのラフカットを上映する多くの場合、作品完成を第一の目的とした専門家による建設的な意見、アドバイスを作家に対して与えるクローズドな場として行われます。ヤマガタ・ラフカット!では、映画の「作品」という枠組みを一度ほどき、映画祭に集うあらゆる人々が、立場、ジャンル、国境を越えて交わす対話の場の可能性を模索します。

 今年で3回目となるこのプログラムは、「見る」ことと同等に、またはそれ以上に「話す」ことを大切にしてきました。制作者によるトークやパネルトークではなく、会場の公開対話のみ、監督自身も客席の一人として発言してもらいます。ラフカットを見ることは、完成した映画から零れ落ちる断片を見ることのほかに、映画を完成度とは違う尺度で見ることでもあります。例えば前回、「ラフカットであっても、編集されて公開される以上、見る者にとっては完成作品だ」、「作るものにとって、作品は常にラフカットだ」という言葉がありました。

 目の前に映し出される映像をそのままの現実として受け入れ、そこから感じたこと、思ったこと、考えたことをゆっくりと言葉にしていくこと、言葉にならずとも他者の言葉を聞き、考え続けることで、映像を見るという個人体験から、少し外側にはみ出すことができるのではないでしょうか。

 このプログラムでは、映画祭が、そこを訪れる方々にとって、映画を見るだけでなく、話すだけでなく、そこで起こることを見届け、それぞれの生活に持ち帰る何かを手にできる場所になることを願っています。

 今年はアジアからもラフカットを募集しました。国内2本、アジア2本のラフカットを上映し、同時通訳で対話を行います。地元でボランティアとして参加する高校生、大学生たちが中心となり対話する回もあります。多様な言葉が飛び交う対話の場にご参加ください。

酒井耕、渡邉一孝(プログラム・コーディネーター)