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■林旭東
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ホールド・ユー・タイト
Hold You Tight
愈快樂愈墮落
香港/1998年/広東語、英語/カラー/35ミリ(1:1.85)/96分

監督:關錦鵬(スタンリー・クワン)
脚本:魏紹恩(ジミー・ガイ)
撮影:關本良(クワン・プンレョン)
編集:李明文(モーリス・リー)
美術:余家安(ブルース・ユー)
製作:文懐(レイモンド・チョウ)
出演:淑貞(チンミー・ヤウ)、陳錦鴻(サニー・チャン)、曾志偉(エリック・ツァン)
製作会社:クワン・クリエーション・ワークショップ
提供:ポニーキャニオン、オメガ・プロジェクト


スタンリー・クワン
Stanley Kwan
關錦鵬


映画監督。1957年香港生まれ。香港バプティスト大学でコミュニケーション学を学ぶ。俳優志望でテレビ局に入るが、まもなく制作部に移り、アン・ホイ、イム・ホーらやがて香港映画の新世代となる監督たちの助監督を務める。1985年初の長編劇映画『女人心』を監督。続いて『ルージュ』(1987)、『フルムーン・イン・ニューヨーク』(1989)など、巧みな女性の心理描写 で“香港ニューウェーブ”の最も重要な監督の一人として頭角を表わす。『ロアン・リンユイ/阮玲玉 』(1991)で国際的な評価を確立(ベルリン映画祭主演女優賞)。『赤薔薇・白薔薇』(1995)の後、一時劇映画を離れ、舞台演出や短編実験映像、ドキュメンタリー『男生女相』『私の香港/念如昔』(1997/1997年本映画祭招待作品)で自己の生い立ちと性的アイデンティティを見つめ直す。『ホールド・ユー・タイト』(1998)で新境地を開拓。最新作はエドワード・ヤン、岩井俊二との競作プロジェクト“Y2K”の1本『テイル・オブ・アイランド(仮)』(1999)。

1997年、香港。中国本土生まれのコンピューター・プログラマーの青年。彼に自分でも理解できない強い感情を持ちながら、その妻と関係を持ってしまう台湾出身の少年。そして香港生まれの人のよい不動産屋のゲイの男。台湾の少年はその後台湾に帰り、その妻と瓜二つの女性に出会う。彼らが不器用に魅かれ合い、絡み合う。人生の断片としての映像が、物語的な時制から解き放たれ、人物たちの心の動きだけに従って自在につなげられて行く。一時劇映画を離れ、演劇、実験映像などを経験し、そして2本のドキュメンタリーを手掛けることで、自身のアイデンティティの原点を見つめ直したスタンリー・クワンが驚くべきシンプルさ、率直さ、正直さで描くのは、愛に不器用な現代人が自分を見つめ直し、人と、そして自分自身との関係を取り戻そうとする姿であり、同時に1997年という歴史の節目が香港の人々にとって何であったかについての、精神的なドキュメントでもある。

【審査員のことば】
昨年、イスラエルに行ってエルサレム映画祭の審査員団の一員を努めたのは素晴らしい体験でした。そこで見たドキュメンタリー映画が、私の目から鱗を落としてくれたのです─魅力的な題材に、若い映画作家たちの斬新な表現の形。そうした映画を見るにつれて、私が何年も映画を監督していたあいだに、2つのことをすっかり見落としていたことに気づかされました。
第1に、世界の別の場所に行くにあたって、いかに自分が不十分な情報しか知らなかったかということです。私のようにしょっちゅう劇映画ばかり作っている監督にとって、自分たちがスクリーン上に作り上げる世界だけに視野をせばめてしまうことは、あまりにも簡単です。外に現実の世界があることを思い知らされるのは、いつだってありがたいことです。
第2に、自分たちのエネルギーのレベルが、時の流れに応じてどれだけ変わってしまうかを思い知らされました。若い映画作家の作品の中に、新しく刺激的な要素を見るのは、まるで珍しくもない。しかし若い映画作家が作品に持ち込む創造的なエネルギーは、時と共にいとも簡単に雲散霧消してしまう─それも本人がそうと気づかないうちに。もし今、もう一度『地下情』を作れと言われたとして、私が1986年にこの映画を作ったのと同じやり方で監督することは、たぶん無理でしょう。長年経験を積んで来た映画監督にとって、若い才能の新しく刺激的なアイディアに直面 するのは非常に貴重なことです。
エルサレムでの体験は私の視野を広げ、映画作家としての自分自身を考え直させてくれました。山形国際ドキュメンタリー映画祭でも同じような体験ができるだろうと願い、また期待してもいますし、映画祭に参加されるみなさんも、今日の若いドキュメンタリーについて私と同じように感じて下されば、と願っています。
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COPYRIGHT:Yamagata International Documentary Film Festival Organizing Committee