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YIDFF 2013 インターナショナル・コンペティション
ジプシー・バルセロナ
エヴァ・ヴィラ 監督インタビュー

受け継がれるジプシーの魂


Q: 私はスペインを訪れたとき、生のフラメンコを見て、その力強さや表現の豊かさに感動のあまり涙がでました。情熱溢れるフラメンコという芸術を映像に収めるときに、工夫したことがあれば教えてください。

EV: 私たちがこの映画でやろうとしたことは、とても内的な感情を表現する芸術としてのフラメンコをフィルムに収めるということでした。踊りの名手であるカルメン・アマヤが生まれてから今年で100年なので、その記念すべき年にこの映画をつくろうと思いました。カルメンが伝説的、神話的存在になっていて、彼女が残したものが孫のカリメを通してどのように継承されているか、それを追っていこうとしました。世代に受け継がれてきているものをフィルムに収めることが、このフラメンコという芸術を記録するのに最良な方法でした。

Q: 鳩の羽音と馬のひづめの音を、フラメンコの足音と合わせて編集しているのは、どういう意図があるのでしょうか?

EV: 音の側面は非常に重要な要素であって、神経を使いました。ジプシーの生活と芸術は非常に密接です。それらが分かれているのではなくて、ひとつであるということを示したかったのです。フラメンコは耳で聞くものでもあります。鳩や馬、それはジプシーの生活にとって非常に重要で、その要素をなんとかして映画の中にも取り入れて表現したいと思いました。

Q: バルセロナという大都市で、ジプシーの強固なコミュニティが現在まで続いているのはどうしてでしょうか?

EV: バルセロナのジプシーのコミュニティにはいろいろな儀式や習慣があって、彼らのアイデンティティに深い影響を与えています。フラメンコはそれらを保っていくことに、非常に大きな役割を担っていると思います。

 ジプシーの中にあるドゥエンデ(魔力)という魂、それこそがフラメンコの神髄です。フラメンコの本当の姿というものは中に入ってその人たちと交わっていかないとわかりません。そのフラメンコの神髄がどんなものかというのはスペイン人も知りません。彼らとつきあってはじめてわかることです。今回カリメと知り合い、映画をつくっていく中で本当のフラメンコの姿に触れることができました。そういったことを、いろいろな人に知ってもらえたらいいと思います。

Q: 映画監督としてフラメンコを見たとき、どう思われますか?

EV: フラメンコとドキュメンタリーは遠く離れた別のものではなく、共通点があると思っています。踊る人・ギターをひく人・歌う人、この3つの要素が一緒になってフラメンコはできています。

 映画では、監督・カメラ・音響などいろいろな人がいて、撮ろうとしている対象にカメラを向けて、真実がその姿を現す瞬間、ドゥエンデ(魔力)が立ち上がってくる瞬間をずっと待っているのです。私はチームと一緒にその瞬間を見守りながら、撮ったものをデザインして観客にみせるのです。

(採録・構成:斎藤里沙)

インタビュアー:斎藤里沙、大宮佳之/通訳:川口隆夫
写真撮影:森川未来/ビデオ撮影:宮田真理子/2013-10-11