english
特別招待作品

追悼 勅使河原宏

提供:勅使河原プロダクション


-

勅使河原宏の生涯にわたる多彩な活動に一貫しているのは、創造性のダイナミズムに対する頑ななまでの姿勢である。クリエイターとしてプロデューサーとして、戦後日本のアヴァンギャルド芸術の世界に大きな足跡を残した彼にとって、芸術とはアーティストが美を劇的なダイナミズムをもって創造する行為であり、新しい価値を持った芸術は、芸術運動が交差する場の中から生まれるものだったに違いない。だから、大学で絵画を学んでいた彼が出会った映画というメディアは、様々な芸術ジャンルを統合し、イメージや概念を具現化し、表現としてダイナミックに構築する場として非常に魅力的だったといえるだろう。

 亀井文夫に師事し、ドキュメンタリーも監督の主観的な作品であるという認識の実践を短編『ホゼートレス』(1959)で開花させた彼は、それ以降、ドキュメンタリーにおいても劇映画においても、常に明確な作家の視点とドラマティックな構成力を持った作品を作り上げていった。情感や抒情など曖昧な要素は排除され、作家の美意識によって切り取られた即物的な現実の組み合わせが抽象的な観念を映像化してゆく…。その独自の世界は、草月流家元という恵まれた環境を背景に、商業主義に妥協することなくその美を研ぎ澄ませていった。才能とそれを支え、表現する環境を併せ持った彼は、ある意味で純粋培養された幸福な戦後アヴァンギャルド芸術の継承者であったといえるだろう。

鈴木章浩


勅使河原宏

1927年、草月流の家元・勅使河原蒼風の長男として東京に生まれる。1950年、東京美術学校(現・東京芸術大学)卒業。美術映画『北斎』(1953)の演出を機に映画界入りし、亀井文夫作品に参加する。1950年代後半、松山善三、羽仁進らと“シネマ58”を結成し『東京1958』(1958)を集団製作。長編劇映画第1作の『おとし穴』(1962)以降、『砂の女』(1964)、『他人の顔』(1966)、『燃えつきた地図』(1968)と安部公房の脚本による劇映画を連作。『サマー・ソルジャー』(1972)の後、一時沈黙するが、1980年代に映画界に復帰。長編ドキュメンタリー『アントニー・ガウディー』(1984)や長編劇映画『利休』(1989)を発表。1989年、第1回目の本映画祭審査員長を努める。1992年、『豪姫』を発表。2001年4月死去。


東京1958

Tokyo 1958
- 日本/1958/フランス語、英語、日本語/パートカラー/16mm/30分

演出・脚本・企画:勅使河原宏、羽仁進、松山善三、草壁久四郎、荻昌弘、川頭義郎、丸尾定、武者小路侃三郎、向坂隆一郎
撮影:菊池周、瀬川浩、藤井良孝 音楽:原弘男
製作:シネマ58

映画監督・勅使河原宏、松山善三、羽仁進、川頭義郎らと映画評論家・荻昌弘、草壁久四郎、丸尾定ほか計9人が結成した実験映画集団“シネマ58”がベルギーのブリュッセルで開催される世界実験映画コンクールへの出品を目的に集団製作した実験的作品。脚本、演出、編集などの全てを全員で協議し、共同で行なうというユニークな方法を採用。“東京の混沌と古い日本”というテーマを浮世絵を引用しつつ日常の断片の中で描こうとした。



いのち ―蒼風の彫刻

Sculptures by Sofu―Vita
- 日本/1962/ダイアローグなし/モノクロ/16mm/11分

監督:勅使河原宏
撮影:瀬川浩
編集:守随房子
音楽:一柳慧
照明:久米光男

草月流の創始者である父・勅使河原蒼風による独特のフォルムを持った彫刻の数々を、アヴァンギャルドなイメージの積み重ねと音響効果によって構成した異色の美術映画。室内に展示されていた彫刻が、森や海といった大自然の風景と対峙させられ、オーバーラップ、コマ撮り、クローズアップなどの手法によってアブストラクトな映像の動きに作り上げられる。動かない彫刻に内在する「いのち」の躍動を、映画によって再構築する試み。



白い朝

AKO―White Morning
- 日本/1965/日本語/モノクロ/35mm/29分

監督:勅使河原宏
原作・脚本:安部公房
撮影:石本泰博
音楽:武満徹
製作:若槻繁
出演:入江美樹、長谷川照子、松下洋子
製作会社:にんじんくらぶ

日本、イタリア、フランス、カナダの4ヶ国の合作によるオムニバス映画『15才の未亡人たち』の日本編として製作された安部公房原作・脚本による作品。パン工場で働く16歳の女性アコを主人公に、シネマヴェリテ風に描かれる、60年代の青春の姿。ボーイフレンドたちと過ごす休日のスケッチを主軸に、日々の工場での作業風景と生活に対する若者たちのコメントがコラージュされる。心象風景を際立たせる音楽は武満徹が担当。



ホゼートーレス Part II

Jose Torres Part II
- 日本/1965/日本語、英語、スペイン語/モノクロ/35mm/54分

監督:勅使河原宏
撮影:マービン・ニューマン
編集:守随房子 
録音:奥山重之助 
音楽:武満徹 
ナレーター:芥川比呂志 
製作:青柳哲
製作会社:勅使河原プロダクション

1959年に製作した、1956年度メルボルン・オリンピック・ミドル級銀メダリストであるプエルトリコ系ボクサー、ホゼー・トーレスの記録『ホゼートレス』(1959)の続編。彼が世界ライトヘビー級チャンピオン、ウィリー・パストラーノに挑戦しチャンピオンとなった1965年の試合を、練習風景から克明に記録した作品。心の揺れをディティールから掬い上げる試合前と1ラウンドをワンカットで描く試合のシーンの対比が印象的な作品。



特別招待作品満山紅柿 上山―柿と人とのゆきかいDevotion小川プロ小特集青年の海 ―四人の通信教育生たち―日本解放戦線・三里塚の夏牧野物語・養蚕編ロング・ホリデー追悼勅使河原宏東京1958いのち ―蒼風の彫刻白い朝ホゼートーレス Part II家庭内暴力主人の館と奴隷小屋三人三色映画祭予告篇集