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●小川紳介賞
『チーズ と うじ虫』
- 日本/2005/日本語/カラー/ビデオ/98分
監督:加藤治代
母親の死と向かい合った個人映画であるが、センチメンタルな感傷に陥ることなく対象との距離を保ちながら作品を巧みに構築しているのは素晴らしい。ポエムのように紡ぎだされた言葉と映像との組み合わせが見る者の視線を膨らませ、作者と対象との関係を超えた映画的な世界が紡ぎだされていく様は、初々しい新鮮な印象をもたらしてくれる。肉親の死という誰もが感傷的にならざるをえないにもかかわらず、感動は作品世界そのものから生み出される。
●奨励賞
『大統領ミール・ガンバール』
- イラン/2005/ペルシャ語/カラー/ビデオ/70分
監督:モハマド・シルワーニ
大統領選挙に何度も立候補して落選する田舎のおじいさん。そのまじめで朴訥な姿を客観的な距離を保ちながら描くことで、イラン社会の片隅で生きる人々の感情と姿がアイロニーを漂わせながら伝わってくる。遠景でとらえたオープニングシーンが素晴らしいし、またラストの夫婦の絆を見せるところも秀逸だ。対象とその環境の持つ雰囲気やリズムを尊重した作り手の姿勢が印象深い。
●奨励賞
『ガーデン』
- イスラエル/2003/ヘブライ語、アラビア語/カラー/ビデオ/85分
監督:ルーシー・シャツ、アディ・バラシュ
テルアヴィヴの街に暮らすティーンエイジャーのストリートチルドレンの生活を追っているが、対象となる二人の若者が素晴らしい。そうした対象との出会いと歳月をかけた撮影は、明らかに作り手の才能である。彼らの生活に入り込み、彼らの感情を巧みに引き出しながら、往々にして政治的にとらえがちなイスラエル社会の現状を別の面から生き生きと描き出していて刺激的である。
●特別賞
『Dear Pyongyang』
- 日本/2005/日本語、韓国語、朝鮮語/カラー/ビデオ/107分
監督:梁英姫(ヤン・ヨンヒ)
「在日」という避けて通れない自分の生い立ちから、自分と父親の関係と家族の絆をみつめた個人映画であり、「在日」の歴史と自分史を重ね合わせた意欲的な作品である。作者は映像による見せ方も心得ているようで、多くの要素を巧みに取り入れながら自分の生き方を問いかけるという構成は刺激的である。カメラによって何かをとらえたいという作者の欲望がひしひしと伝わってくる作品だ。
●特別賞
『25歳、小学二年生』
- 台湾/2003/北京語、台湾語/カラー/ビデオ/60分
監督:李家驊(リー・ジアホア)
子供の頃に起こした事件のトラウマに苛まれる作者がカメラで自分の心を見つめなおすという自分探しの個人映画である。言葉によって伝えようとする部分が大きいが、それでも映像は絵解きにならずにカメラで検証しようとする姿勢は評価できる。自分の心の傷をこじあけることは辛いことだが、その苦しさや切なさが映像の連なりの隙間から滲みでてきて見る者の胸に迫ってくる。