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やまがたと映画
  • 蔵王を撮った男・塚本閤治
  • 戦前のやまがたを見る
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  • やまがた・映像の未来
  • 『あゝ故郷』を聴く!
  • Part 2 戦前のやまがたを見る



    「先日、家の建て替えで蔵を取り壊した折、祖父の撮った8mmフィルムが大量に出てきたが、どうして良いかわからずに捨ててしまった」。そんな台詞を知人から聞き、卒倒してしまった。聞けば、同じ蔵から出てきた壷や掛け軸の類は、価値があるやもしれぬと保管したのだという。これはけっして珍しい話ではない。確かに、一見フィルムの類は資産的価値が薄いと思われがちだ。しかし、フィルムには壷や掛け軸のように真贋は無いのだ。すべてが本物であり、歴史的、文化的価値が秘められており、加えてそれらのフィルムの中には、いまでは原版の所在が不明となった幻の作品が眠っているケースも往々にして在るのだ。

     「やまがたと映画」では、映画祭という機会を利用し、棄てられかけたフィルムの保管を広く呼びかけ貴重な記録を収集すると共に、幻の作品を掘り起こし後世に伝えていきたいとの趣旨のもと「やまがた・フィルムフロンティア」をここに宣言する。その先駆けとして、今回「戦前のやまがた」を記録した数多の映像をご覧いただきたい。大正モダンの残り香と昭和初期の牧歌的風景が混在した、「あたらしくもなつかしい山形」は、きっとあなたを驚かせることだろう。

    (斎藤健太)


    - お祖父様の朝

    Grandfather's Morning

    1940/サイレント/モノクロ/16mm/3分
    監督:祖山誠一 提供:伊藤啓子

    昭和15年のフィルム。外地に赴任している弟に送るために、祖父が、映像作家に依頼して撮ってもらったものだと、聞いていた。亡き母から16mmのフィルムを預かっていたものの映写機がないので観ることもせず、ずっと引出しに入れたままでいたものである。写真でしか知らぬ曽祖父と曽祖母が、生き生きと動いている。まだ若い祖父と祖母がいる。撮影の翌年、太平洋戦争勃発。映像の中の、爽やかな笑顔をした中学生はこの数年後、戦場に散った。

    (山形市 伊藤啓子)



    - 戦前〜戦後の上山市

    Kaminoyama City before and after the War

    撮影年詳細不明/サイレント/カラー、モノクロ/ビデオ(原版:9.5mm、8mm)/20分
    撮影:長谷川謙三 提供:蟹仙洞、長谷川浩一

    上山市で製糸所を経営していた長谷川謙三(1886-1957)は、美術愛好家としても知られ、半生をかけて収集した美術品を保存公開する「蟹仙洞」を創設した。氏は写真にも強い興味を抱き、ガラス乾板からはじまり、ライカでのスナップ写真や9.5mm、8mmフィルムをいち早く使い、多くの記録を残している。第二次大戦前後と思われる上山競馬会、上山スキー場、温海の海水浴などの風景が収められたこれらのフィルムは、本企画の呼びかけに応え、約半世紀ぶりの蔵出しとなった。



    - 石原莞爾の撮らえた満州

    Ishiwara Kanji's Footage of Manchuria

    1930年頃/サイレント/モノクロ/ビデオ(原版:9.5mm)/25分
    撮影:石原莞爾 提供:鶴岡市郷土資料館、NHKアーカイブス


    - 立正安国(石原莞爾インタビュー)

    "Securing the Peace of the Land": An Interview with Ishiwara Kanji

    1946/日本語/モノクロ/ビデオ(原版:16mm)/5分
    提供:鶴岡市郷土資料館

    石原莞爾(山形県鶴岡市)といえば、満州事変の首謀者として有名である。同時に日本人ではじめてライカを買い、またパテ・ベビー9.5mmで様々な事象を撮っている。今回上映する映像は、満州事変直前の昭和5年頃の満州を撮っているものが多い。永田鉄山大佐の来満映像や、旅順などの戦跡巡りなどが興味深い。『立正安国』は戦後の映像だが、石原の組織した政治組織「東亜連盟」の各支部で上映されたものではないか。