審査員
ラヴ・ディアス
●審査員のことば
私は映画を見たい。映画館のなかで。暗闇のなかで。いわゆる観客と。私のような映画中毒の部族と一緒に。審査が条件だからその場に私はいなければならない。そして審査は話し合いをするのが条件だから、より偉大な映画へのあの連続、あの教養、あの実習、あの文化、あの永遠の追求が、私には必要なのだ。
ラヴ・ディアス
1958年、フィリピン・ミンダナオ島生まれ。監督作品に『Batang West Side』(2001)、『Evolution of a Filipino Family』(2004)、『Heremias』(2006)など。『Death in the Land of Encantos』(2007)はヴェネチア映画祭オリゾンティ部門のクロージングを飾り、金獅子賞スペシャル・メンションを受賞。『Melancholia』(2008)は同映画祭オリゾンティ部門グランプリを受賞。最新作『北 ― 歴史の終わり』(2013)はカンヌ映画祭ある視点部門で上映された。美しい長回しの映像と長尺の作品、フィリピンの社会的・政治的状況を映し出す作家として知られる。
北(ノルテ)― 歴史の終わり
Norte, the End of HistoryNorte, Hangganan ng Kasaysayan
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フィリピン/2013/タガログ語/カラー/Blu-ray/250分
監督、編集:ラヴ・ディアス
脚本:ラヴ・ディアス、ロディ・ヴェラ
撮影:ラウロ・レネ・マンダ
美術:ペリー・ディゾン
録音:コリーヌ・デ=サン=ホセ
出演:アーキー・アレマニア、アンジェリ・バヤニ、ソリマン・クルズ、アンジェリナ・カナピ、シド・ルツェロ、ヘーゼル・オレンシオ、メー・パナ
製作会社、提供: ワッキー・オー・プロダクションズ
*東京国際映画祭と共催上映
シニカルに社会正義とフィリピン社会を語る、エリート法学生のファビアン。金貸し女とその娘をナイフで刺し殺してしまうが、殺人に問われたのは、近くに住む貧しいDVD売りのホアキンだった。身を守るすべを知らぬまま、ホアキンは有罪となり、終身刑に処される。残された彼の妻と幼い子どもたちの絶望、静かに膨らんでいくファビアンの罪悪感と暴走、獄中のホアキンの静謐な日常が、ワイド画面と緊張感あるカメラワークの長回しで映し出される。題名の「ノルテ」はルソン島最北部のイロコス・ノルテ州のこと。かつて司法試験をトップ合格したマルコス大統領の生誕地として知られる。