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木々について語ること 〜 トーキング・アバウト・ツリーズ

Talking About Trees

フランス、スーダン、ドイツ、チャド、カタール/2019/アラビア語/カラー、モノクロ/デジタル・ファイル/94分

監督、脚本、撮影:スハイブ・ガスメルバリ
編集:ネリー・ケティエ、グラディ・ジュジュ
録音:エルサディグ・カマル、カタリナ・フォン・シュレーダー
整音:ジャン・マレ
出演:イブラヒム・シャダッド、スレイマン・イブラヒム、エルタイブ・マフディ、マナル・アルヒロ、ハナ・アブデルラーマン・スリマン
製作:マリー・バルドゥッキ
製作会社:AGAT Films & Cie
提供:アニモプロデュース
www.animoproduce.co.jp

1960〜70年代に民主主義と自国の映画史を築くことへの期待を胸に、スーダン国外で映画制作を学んだ男たち。故郷へ戻った彼らは、長年放置されていた屋外の映画館を再活用することに奔走するが、行政からの許可は下りない。スピーチの声は、礼拝を呼びかけるアザーンによってかき消されてしまう。本作は、喪失を生きる人間と映画史の物語である。度重なる軍事政権やクーデターに翻弄され、疲弊する人々。暗闇のなかで『サンセット大通り』(1950)の最後の場面を再現する4人の老夫たちの身振りは、映画的な遊戯となる一方で、どこか空虚なものに見えるかもしれない。だが、独裁政権下の沈黙を批判するブレヒトの詩に由来する題名が象徴するように、巡回上映を続ける彼らのスクリーンには、愛と誇りに満ちたアフリカ映画への夢が寡黙かつ雄弁に映し出されるだろう。



あの店長

The Master

タイ/2014/タイ語/カラー/デジタル・ファイル/80分

監督:ナワポン・タムロンラタナリット
出演:ペンエーグ・ラッタナルアーン、ソンヨット・スックマークアナン、バンジョン・ピサヤタナクーン、コンデート・ジャントゥランラッサミー、マノータム・ティアプティアムラット
製作:ソーロス・スクム、ドンサロン・コーウィットワニッチャー、カッタリーヤー・パオシージャルーン
字幕協力:大阪アジアン映画祭

かつてバンコクのマーケットの一角に実在した、海賊ビデオ店。タイで手に入れることの困難だった古今東西の「アート系作品」を数多く取り揃え、シネフィルたちの欲望に応え続けたこの店舗では、字幕やパッケージだけでなく、作品解説までもが自前で制作されていた。1990年代後半から2000年代前半にかけて、タイ映画のニュー・ウェーブの誕生を準備したとも言える伝説的な場所について、常連客だった映画監督、脚本家、批評家たちが語る。彼らの情熱的な言葉から、映画への愛と不法コピーをめぐる問題が浮かび上がる。多様なインタヴュー、エピソードをモザイク状に組み立てあげ、ひとつの実体を多角的な視点から描くその手法は、『36のシーン』(2012)から『BNK48: Girls Don't Cry』(2018)に至るまで一貫するものだと言えるだろう。



チャック・ノリス vs 共産主義

Chuck Norris vs Communism

イギリス、ルーマニア、ドイツ/2015/ルーマニア語/カラー/デジタル・ファイル/81分

監督、脚本:イリンカ・カルガレアヌ
撮影:ジョゼ・ルイーズ 編集:ペール・K・キルケゴー 音楽:アンヌ・ニキティン、ロブ・マニング 出演:アナ・マリア、モルドヴァン 製作:マーラ・アデイーナ
製作会社、提供:Vernon Films

1980年代の冷戦期、チャウシェスク独裁政権下のルーマニア。検閲によって西側の情報や映像が生活のなかに入ってくることはほとんどなく、テレビでは自国の退屈なプロパガンダしか放映されていない。人びとは旅行を制限され、秘密警察による監視を恐れている。そのような状況のなかで権力への抵抗ともなったのが、地下流通するハリウッド映画のVHSテープであり、チャック・ノリスであり、ロッキーだった。警備員を買収し国境で受け渡されるVHS、謎の闇業者、自由な世界を象徴する吹き替えの女性の声。本作では、当時を振り返る人びとのインタヴューに再現映像を織り交ぜながら、ルーマニア人たちが映画に憧れ、物語を渇望していた時代を描き出す。