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YIDFF 2003 インターナショナル・コンペティション
羊飼いのバラード
エリッヒ・ラングヤール 監督インタビュー

現実が映画に、映画があなたに、そして……


Q: 農家や農場をテーマとする理由は?

EL: 子供の頃から農家や農場に興味があり、近所の農家に遊びに行くことも度々ありました。自然の中では、人間や動物がシンプルな形態で共存しています。そこが私の興味を惹いたのです。また、農場を模ったミニチュア等の玩具で遊ぶこともありました。その遊戯を通じて得られる全体を見渡すという感覚が、とても快かったのです。私が作品で農家や農場をテーマとするのは、こうして子供時代に直接的に頭の中に焼き付けられたイメージが存在するからです。

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Q: 現実を作品化するプロセスは?

EL: まずイメージがあり、そこから浮かぶアイディアを携えて、現場での撮影を開始します。ただしこの時点で私は、監督というよりはいわば観客として現実を体験することを望んでいます。すると、頭の中で事前に描いていたイメージやアイディアと現場との間のズレや矛盾に出逢います。それが素晴らしいことなのです。私は自分のアイディアにそぐわない現実を切り捨てるのではなく、そうしたズレや矛盾そのものを作品内に収め入れようとしています。以上のように、ファインダーを通しながらあたかも観客のように現実を体験した後、積み重なるフィルムを繰り返し分析する作業に入ります。ひとつひとつのパーツ(映像)の内部に隠されている意味を見出し、各パーツを連結するロジックを探し出します。まるでパズルゲームのようにそれらを組み合わせていくことで、最初は小さかったパーツが徐々に膨れ上がり、やがて大きなシークエンスへと発展します。この作品では、以上の作業を終えた段階で3時間弱のラフなものができ上がりました。そしてその後、ドラマツルギーを意識しながら編集作業へと移行します。最終的に作品を完成させるのは詩的な作業であり、その作業を司るのは私自身の深部に息づくリズムです。私固有の絵画的・音楽的なリズムに、ジャーナリスティックな観点や民俗学的な視点等も組み入れ、それらすべてが作品内に反映されるような仕方で体系立てていきます。その意味で、この作品は事実であると同時にフィクションでもあると言えます。私にとって、劇映画とドキュメンタリー映画にはほとんど区別がありません。唯一異なっているのは、主に俳優が演じる劇映画に対し、ドキュメンタリー映画は現実に存在する人々を映し出すという点です。そして私がドキュメンタリー映画に関して抱いているひとつの大きな希望は、スクリーン上で展開される物語が観客にとって現実となることなのです。私の映画観は、現実/作品/観客の三項を頂点とする三角形を用いて説明することができます。体験した現実を私が作品として仕上げ、それを観客へ委ねます。作品が観客自身にとっての現実となれば、三辺が揃い、三角形が完成するのです。名前(Langjahr)通り、話が長かったでしょうか?(注:langはドイツ語で「長い」の意)

Q: 確かに私のイメージ通りには進行しませんでしたが、お話にあったようにイメージと現実のズレが素晴らしいのですよね(笑)。では最後に何か?

EL: 作品を完成できたのは、シルヴィアの多方面にわたる協力のおかげです。本当に感謝しています。
(かたわらから妻のシルヴィア・ハーゼルベックさんが)長い間一緒に仕事をしていると、ちょうど作品に登場する夫婦のように、衝突することもありましたが(笑)。

EL: 映画祭期間中はずっと山形にいます。もっと話をしたいのでいつでも声を掛けて下さい(笑)。

(採録・構成:和田浩)

インタビュアー:和田浩、武田千里/通訳:渡辺真理
写真撮影:佐藤朱理/ビデオ撮影:黄木優寿/2003-10-11