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YIDFF 2003 アジア千波万波
オルド
テミールベク・ビルナザロフ 監督インタビュー

『オルド』の悦楽――魅惑のゲームと陽気な人々


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『オルド』の撮影について

 「オルド」はキルギスタンの国民的なゲームですが、私の故郷のナリン州とタラス州でしか行われていません。舞台となった故郷を撮影することは、私のライフワークのひとつです。前回まではフィルムでしたが、今回は資金集めに苦労し、結局ビデオでの撮影になりました。今回、資金を援助してくれたのは、カザフスタンでの学校時代の友人です。エネルギーのほとんどは、資金調達に費やされました。私の国で映画を作ることは、経済的に大変です。貧しい国ですが、伝統的なものを大切にするところもあるので、地域に伝わるゲーム「オルド」を撮ってみようと思いました。12分という作品の長さは、共同監督のエミルが決めました。私としては10分や8分でもよかったのですが。

「オルド」をする人々

 ナリン州で、「オルド」を行っている場所を探していたところ、ちょうどゲームの場面に出くわしました。はじめは、「オルド」というゲームについて撮ろうと思っていたのですが、次第にゲームに興じる人々のほうに興味が移りました。ナリンの人々は感情をすぐに表に出し、粗野な感じがするのですが、内面は非常に誠実で、純粋な心をもち、人にだまされやすかったりもするのです。私はナリンの人間なので、ゲームの周りをうろうろしたり、大声を張り上げたりして、撮影を忘れてしまいそうになりました。作品に登場した鞄の中身は鶏なのですが、これはゲームの賞品ではないのですよ。鶏を市場へ売りにいこうとして通りがかった人が、ゲームに参加してしまったので、鶏は放ったらかしにされたのです。誰でも参加したくなるんですよ。

ゲーム「オルド」について

 骨は羊の骨で、毛糸などの染料で色をつけます。村には骨をまとめて持っている人がいるのです。羊が賞品になることもありますね。羊が沢山いますから。残念ながら、私は今まで賞品をもらったことはありません。子供の頃に、「オルド」に似た骨を使ったゲームもよくしましたが、勝ったことがありません。ルールは複雑で、覚えるだけで1カ月はかかります。かがんだ時に、帽子を落としてはいけないとか、骨の山に背中を向けてはいけないとか。うまく命中するようになるには一生かかりますが、日本でも広まると嬉しいです。

今後の予定

 故郷の村を撮っていくつもりです。小さい村の中に30世帯ぐらいが住み、違う年齢の子供たちが、同じ教室で勉強しているようなところです。新聞もないような村ですが、みんな生活を楽しんでいます。いいことばかりとはいえませんが、外部から悪い影響を受けないのが利点です。村を出た青年が、2、3年で都会から戻ってきたので理由を尋ねたら、都会では、大切なものが失われていくような気がしたとのことでした。自然と調和しつつ生活している、村の人々の姿を撮りたいと思っています。

日本とのかかわり

 キルギスタンで、村上春樹や松尾芭蕉はよく知られています。最近では木下順二の『夕鶴』が上演されましたし、ビシュケクでは、日本映画の特集上映をしています。私は、井原西鶴作品の舞台演出をしました。歌舞伎や能など、日本の伝統芸能も勉強したいですね。また、日本でキルギスタン映画の特集上映をしたいです。

(採録・構成:加藤初代)

インタビュアー:加藤初代、黒川通子/通訳:小原志浦
写真撮影:黒川通子/ビデオ撮影:加藤孝信/2003-10-12