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YIDFF 2007 インターナショナル・コンペティション
革命の歌
ヨウコ・アールトネン 監督インタビュー

時代が変わっても音楽は生きつづける


Q: この映画を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。

JA: 初めに、フィンランドの70年代の政治的側面について取り上げてみたい、と思ったことから始まりました。最初は、伝統的なドキュメンタリーの手法で、この映画を作る予定でしたが、考えを重ねるうちに、当時の人たちの体験や経験をもっと織り込んでいこうと思いました。そして、当時の人々がどのような感じ方をしたのかを描き出したかったのです。そのように考えるうちに、音楽というものが重要な要素であることに気づき、むしろ音楽に焦点をあてたほうが良いのではないかと考えがシフトしていったのです。

Q: フィンランドでの観客の反応は? またフィンランドの現代の若者は、この映画をどのように受け止めていますか?

JA: フィンランドでは、この作品を映画館で上映することができました。それによって国内の多くの人に楽しんでもらうことができ、往々にしていい反応でした。おそらく、1990年以降にフィンランドで作られたドキュメンタリーの中で、もっとも人気の高い作品だと認知されています。なぜかというと、この70年代の政治的な部分というものは、今でも重要な要素であり、なおかつフィンランドの歴史も織り込まれているからです。そういった点でも、人々の関心を強く惹いたのだと思います。また手法として取り上げられている、音楽を映画と結びつけて、このふたつのメディアによってテーマを伝えようとした手法が好感を持たれて、いい反応を得ることができたのだと思います。また、現代の若者は、こういった映画について、強い関心を持って観ていると感じています。なぜなら、この映画は彼らにとって両親にあたる世代の状況を語っていて、当時の置かれた状況が今とは全然違ったものであったからです。また、この映画は、彼らに歴史的関心をもう一度向けさせる役割も担っていると思います。おもしろいことに、彼らの両親の世代は、70年代の活動についてあまり話をしませんでした。そういった意味で、この映画が世に登場したことで、再度この時代について議論する機会が与えられたと思います。

Q: 映画の中では、過去と現在の映像が交互に出てきますが、何かを対比させたいと考えられたのですか?

JA: 確かに対比をしているかのようには見えますが、よくよく考えれば、彼らが歌っているのは古い歌ではありますが、歌っている場は現代の場であるわけです。そこで私が伝えたかったことは、彼らは現代になっても、どこかで古い歌を背負いながら生きているということです。これが、今回の映画における基本的なアイディアでした。

Q: 映画の終盤のスタジアムのシーンが印象的でしたが、このシーンにはどのような意図があったのですか?

JA: 特にこのシーンで重要なのは、カップルの視点から対比させたいということです。当時70年代の中盤くらいに、フィンランドの共産主義30周年記念という大きなイベントがあり、その時は4万人の観客が集まりました。ところが今となっては、そういった活動もなくなってしまいました。そして残っているのは誰もいないスタジアムなのです。つまり、時というものは移り変わっている、そして彼らができることは、過去を振りかえることだけだということです。当時の状況はもう消えうせてしまいました。しかしながら、彼らが歌った音楽はいまだに生きつづけている。その部分を私は伝えたいと思いました。

(採録・構成:三條友里)

インタビュアー:三條友里、丹野絵美/通訳:今井功
写真撮影:海藤芳正/ビデオ撮影:海藤芳正/2007-10-07