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YIDFF 2013 ともにある Cinema with Us 2013
沿岸部の風景
鈴尾啓太 監督インタビュー

ありのまま、人の姿から見える震災


Q: この映画を撮る直接のきっかけは、何だったんでしょうか? なぜ被災地へ向かわれたのですか?

SK: いろいろあるんですが、一番大きな理由は、情報が氾濫していて、よくわからなくなっていたことです。被災地に行くようになったきっかけは、ボランティアだったのですが、何回か行くうちに、情報から何か抜け落ちているものがあるのではないか、と思うようになりました。僕自身もずっと、震災がもたらしたものとか、震災をどう自分の中に捉えていったらいいのかが分からなくて、考え続けていかなければならないと思ったんです。4月初めに石巻、南相馬、陸前高田、釜石へ向かいました。カメラは持っていったのですが、初めのうちは全然撮れなかったですね。

Q: この作品を観たとき、人の話そのものよりも、人の仕草や風景に焦点をあてているように感じました。震災にあって、人がどう感じているのか、何を考えているのかを主題にして撮るか、人を取り巻く自然をメインに撮るか、というせめぎあいのようなものはありましたか?

SK: それは常々考えていたことですが、人が話す内容と、周りの自然と、どちらかをメインに据えるというよりは、その狭間にあるもの、人々のいる風景をめざしていました。完全に言葉を拒絶しているわけではないんです。物語が浮かびあがる瞬間というのがあるんです。話しているその人の感じが、何かを帯びているような……。喋っている顔や目や雰囲気などが物語の断片のようなものを帯びる瞬間がごくたまにあって、体験談をそのまま伝えるということではなくて、そういう瞬間を残したいと思いました。

 また、ボランティアをしていると、被災地の人たちが作業する姿、何かをしている姿をよく目にするんです。その時に、震災はこういうものだとか、こういう体験をしたとかの言語化されたものではなくて、失った物や壊れたものを取り戻していく人々の、作業する姿から見えてくるものがあるのではないかと思ったのです。

Q: 作品を撮る前と後で、自分のなかで変わったことはありますか?

SK: 変化は、作品を撮る前後ということではなくて、被災地に行って撮影するたびに、毎回感じていました。けれど、行って撮影して何か感触があっても、東京に戻るとこちらの日常があって、それが地続きではなくて、距離があるので、混乱していました。2カ月に1回10日間ずつのペースで現地に行っていたのですが、行くたびに、戻るたびに、毎回そのずれを感じていたんです。編集についても同様で、去年の初めから1年半くらいやっているのですが、映像をまとめるたびに違ったものとなりました。ただ、パターン化されたメッセージに逃げるよりは、毎回違う、というそのずれを残そうと思いました。

Q: 現在は、まだ撮影中という感じなんでしょうか? それとも、いったん作品にして終っているんでしょうか?

SK: これからも、撮影に行こうとは思っています。でも、付け加えるのか、別の作品にするのか、それとも作らないのか、毎回わからないのです。

(採録・構成:川村康二)

インタビュアー:川村康二、佐藤寛朗
写真撮影:佐藤寛朗/ビデオ撮影:加藤孝信/2013-10-08 東京にて