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貸出作品リスト:YIDFF '93


※監督の下段のデータは、製作国/製作年/使用言語/色/フィルム種別(35mmの場合のスクリーンサイズ)/上映時間/字幕

YIDFF '93 インターナショナル・コンペティション出品作品


黒い収穫

Black Harvest ('93 ロバート&フランシス・フラハティ賞)
監督:ボブ・コノリー、ロビン・アンダーソン
オーストラリア/1992/英語、ピジン語、テンポカ語/カラー/16mm/90分/日本語字幕あり

パプア・ニューギニアの高地を舞台にした、コーヒー・プランテーションの混血の農場主と、部族のリーダーとして近代化を夢見るポピナとの協力と対立を描いている。白人と先住民、現代生活と伝統生活、資本の論理と欲望の論理、それらが複雑に絡み合い、偶然というべきか、カメラは突然勃発した戦争を目撃する。争いは性格を露呈させ、野心的な2人の男の争いが、二つの社会を巻き込んだ争いに発展し悲劇を招くことになるが、こうした悲劇が強い物語性を帯びて観客を引きつける。

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阿賀に生きる

Living on the River Agano ('93 優秀賞)
監督:佐藤真
日本/1992/日本語/16mm/115分/英語字幕あり/山形県内上映のみ(県外上映についてはお問い合わせください)

新潟水俣病で知られた阿賀野川のほとりに住む人々の生活を、監督を始めとする7人のスタッフが共に暮らしながら描き出した。農業や漁業を営み川とともに生きてきた彼らの厳しくも温かい生活をみつめながら、自然を壊してきたものの残酷さを静かに訴えかける。

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予測された喪失

Losses to be Expected ('93 優秀賞)
監督:ウルリッヒ・ザイドル
オーストリア/1992/ドイツ語/カラー/35mm(1.66)/118分/日本語字幕あり

これは男やもめのオーストリア人、ゼップが旧東地区で嫁探しをする話である。一方チェコに住むポーラは、ゼップに西で豊かな生活を約束してくれる男の姿を見る。鉄のカーテンの両側に住む村人たちの生活が、細部に至るまで繊細に記録され、地理的には近いが全く異なった東と西の世界の関係が、土地と人々の感傷的な肖像として描かれている。これらは、若さと愛の喪失であり、国境と故郷の喪失である。

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神の名のもとに

In the Name of God ('93 市民賞)
監督:アナンド・パトワルダン
インド/1992/英語、ヒンディー語/カラー/16mm/91分/日本語字幕あり

監督はヒンドゥー教の遺産と文化に無意識に誇りをもって育ったが、後にそのヒンドゥーの教えが下層のカーストに属する人々や女性たちをいかに圧迫し続けてきたかを知る。普遍的な愛と非暴力を説くガンジーがヒンドゥー教徒の凶弾に倒れてから、インドはだんだんと宗教的暴力が目立つ国となっていく。この作品は、イスラム教徒の聖地バブリ・モスクが破壊される1年前に撮られたが、その破壊の恐怖を映し出すと同時に、その恐怖に直面しながら勇気と人間性を失わなかった人々への尊敬が込められている。

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アフリカ、お前をむしりとる

Africa, I Am Going to Fleece You
監督:ジャン・マリ・テノ
カメルーン/1992/フランス語/カラー/16mm/88分/日本語字幕あり

書き言葉、つまり文字は文明に欠かすことのできない道具であり、同時に歴史的にいつでもどこでも権力と結びつく支配の道具でもある。独立後三十年が経つ、カメルーンもまた三つの言葉に支配された歴史をいまだに色濃く残している。植民地時代の収奪と隷属はアフリカの文化を破壊し尽くし、かつての征服者が強いたことを独立後のいま今度は体制側の人間がためらわず実行している。この作品は、人間の愚劣さとすべてを奪われたものの悪循環のメカニズムを絶ち切ることを考察していく。

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氷の夢

Dreams of Ice
監督:イグナシオ・アグエロ
チリ/1992/スペイン語/カラー/16mm/56分/日本語字幕あり

1992年スペインのセヴィリア万国博覧会のチリ館に、アメリカ大陸発見500年の記念イベントとして南極の氷が展示されることになった。この作品は、その氷を運ぶ船旅を描いたシー・ロード・ムーヴィであると同時に、この船旅に同乗する姿なき主人公が語るモノローグの物語でもある。荒れ狂う海原、南極の氷原、ジョン・ヒューストン『白鯨』のインサートなど、滑るような映像の数々は、ドキュメンタリーが「映画」であることを気づかせる美しさにみちている。

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パート・タイム・ゴッド

Part Time God
監督:ポール・コーエン
オランダ/1992/英語、オランダ語、ノルウェー語、デンマーク語/カラー/16mm/80分/日本語字幕あり

観客は、映し出されたコンピューター画面からごく普通の人々の物語――乳ガンに侵されたニューヨークのアーティスト、恋わずらいのぶどう摘みの少年、原子核を研究する科学者、スリランカの陽気なアヒルの飼育者、などを選ぶ。観客は気まぐれに一時停止したり、早送りしたり、中断したりする。映画は一見、観客の勝手な判断に委ねる形式をとっているように見えるが、それさえままならない。めまぐるしい映像に満ちた実験作。

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テキサス・テナー:イリノイ・ジャケー・ストーリー

Texas Tenor: The Illinois Jacquet Story
監督:アーサー・エルゴート
アメリカ/1991-2/英語/モノクロ/35mm(1.33)/81分/日本語字幕あり

イリノイ・ジャケーは、すばらしいジャズの伝統を受け継ぐ数少ないサキソフォン・ジャズ・プレイヤーのひとりだ。監督は、夢を追いかけるアメリカ人についての作品を作りたかったという。この作品の撮影は1988年から1990年にかけて行なわれ、晩年のジャケーの日常生活や公演の様子を切り取る。また、ライオネル・ハンプトン、ディジー・ガレスピー、ソニー・ロリンズなどのジャズの巨人たちが人となりを語るシーンも見逃せない。これはシンプルな音楽の映画である。