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ヤマガタ・ニューズリール!


圧力下のニューズリール 阿部マーク・ノーネス
ニューズリール誕生 1968

女たちのニューズリール

弾丸映画

インターネット・アクティヴィズム
ネットでの映像配信を通して見えてきたものプレゼンター:小林アツシ(ビデオアクト)
私の湾岸戦争:左翼、右翼、あらゆる方面からプレゼンター:阿部マーク・ノーネス

ニューズリール参考上映

「アヴァンギャルド・フィルムとアヴァンギャルド・ニューズリールとの間に、何の差異もみない。なぜならリアルなニューズリール、すなわち人がそこから脱け出すことを可能にするニューズリールは、ヒューマニティのアヴァンギャルドであらねばならない。そして最も崇高な、最も進歩的な人間の夢によってガイドされなければならない。」

――ジョナス・メカス(『ヴィレッジ・ヴォイス』1968年2月29日号)

 当初、単なる告知としてニューズリール特集と打ち出すや、困ったことが起こった。多くの人がニュース映画の特集と勘違いしていたからだ。考えてみれば、この理解は当然で、即座にアメリカのロバート・クレイマーやらジョン・ジョストによって作られた映画制作集団ニューズリールとの了解があるはずもなかろうと、自分の鈍感さと井の中の蛙状態にあきれつつ、一方で珍しいニュース映画を入れるのも悪くないかもしれない、などと思案してみたりもした。まさにそれはこの企画の始まりだったかもしれない。と言うよりも、その周囲の誤解こそが、このプログラムを自由にしてくれたような気がする。

 特集なので、通常だったら、ニューズリールが概観できるような各時代を代表する重要で歴史的な作品を上映するようなプログラムの構成が妥当であろう(現に第1案はそれであった)。だが、始まりから少しズレてしまい、途中で軌道修正するどころか、今もって、益々離れて行く気配である。しかし紆余曲折を経て現時点ではほぼ落ち着きをみせ始め(残念ながら、タイムリミットの鐘が鳴る)、主に4つのテーマで展開していくことになりそうだ。

 1968年ヴェトナム反戦をきっかけに、ジョナス・メカスの呼び掛けによって生まれたニューズリールの創成期に作られた作品を中心にした「ニューズリール誕生 1968」、今回のインターナショナル・コンペティションの審査員でもある元メンバーのクリスティン・チョイの作品を含んだ「女たちのニューズリール」、また映画を軸にした世界的な連帯と小川プロダクションとの繋がりやその影響への視点を織り込んだ「弾丸映画」、さらには現在の最も連帯的なツールによるネット上で配信されている映像を検証していく「インターネット・アクティヴィズム」。

 「ニューズリール誕生 1968」の中で上映される『4月27日』はシカゴ・ニューズリールによって作られた唯一の作品で、関わったジョン・ジョストでさえ、その当時以来見ていないという幻の作品である。「弾丸映画」で上映される小川プロダクションによる「三里塚」シリーズ第3弾『第三次強制測量阻止闘争』は、ニューズリールの影響を受けて短期間で製作された作品であるが、今回ニュープリントでオープニング上映されることは何よりの喜びである。当時の闘いの核心を生きている彼らの熱情と昂揚をリアルに体感していただけるだろう。

 さらに本プログラムのサブ・カタログをぜひ手にとって見てみてほしい。従来の小冊子という形態を放棄して、終わりなきカタログに挑戦してみた。ファイル形式にして、ギリギリまで記事を入れていくのが、狙いである。さらには期間中に各々の個人によって、手が加えられ、より充実させてくだされば、本望である。

 ジョナス・メカスが表現したような、アヴァンギャルドなヤマガタ・ニューズリールの数日間をお届けできたら、と切に願う。

 本プログラムを形成するにあたり、実に多くの方々のご意見、ご協力をいただいた。この場を借りて感謝の意を述べたい。

小野聖子