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アジア千波万波


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アジア千波万波 特別招待作品
韓国、日本

アジア千波万波 審査員
ピンパカ・トゥイラ
村山匡一郎

ワンダーアジア! ボーダレスに抗って

 2005年のアジア千波万波は、地図上に描かれる〈アジア〉という地域性にとらわれず、アジアという言葉の持つ意味を柔軟に捉え、その場所、その瞬間、そして個々の境界を行き交うというアジア性が特徴だ。境界を越えてしまっている、超えざるをえない現在の社会/政治/個人史の状況を捉え、過去、脈々とつながる〈いま〉とどう向き合うか。

 あらゆる局面に出没する画一化と呼応し、単純にひかれた「線」「差異」というボーダーが存在するという前提に立つ浅はかな言葉「ボーダレス」。そこから想起されるボーダーがあるとすれば地図上にまっすぐ引かれた線しか思い浮かばない。それに抵抗すべく、人間が生きる最初の動機として働くこの感性、ワンダー[Wonder/Wander:疑問に、不思議に思う、怪しみ、あれこれ思いを巡らす、知りたがる、驚く、さすらい、迷う]をたずさえ、アジアを祝福した様相。多彩な26本の上映作品はまさに〈ワンダーアジア〉へと誘ってくれる。

 腰を据えてカメラを持っていれば、そこに何かが写ってくるということを心から信じているかのように染みわたってくる映像。〈私〉の世界を巡る表現に真摯に挑み独自の世界を見せてくれるパーソナル・ドキュメンタリー。監督たちの率直な目線、悠々と自適な人々の息づかいが奏でるリズム。フレームの中に存在する〈場所〉と対話しながら撮影し、寄り添う監督たち。個にまなざしを向け、歴史や個人史に名前をつけて記憶していく作業。社会の集団的記憶をユニークな手法で表現し、内省する試み。アーカイヴを軽妙に使って現在の社会に訴えかけるユーモア・センス!!

 アジアの新進作家を紹介し、応援してきたアジア千波万波。プログラム名やコーディネーターを変えながら、今年で8回目を迎える。上映会場もささやかに拡大し、従来のミューズ1&2、新たに昔なつかし大きな映画館・シネマ旭が加わる。今回、新しくコーディネーターに呼び寄せられたという期待と自戒を込め、観客・監督の皆さまと共に作品群の躍動に身を任せたい。それぞれの潮流が映画館という闇で交差し、瞬きと輝きを灯し祭典を成功させてくれることを心から楽しみに、山形でお会いすることを心待ちにしている。この場を借りて、喜びを与えてくれた製作者の皆さま、プログラム運営に際してご協力いただいた多くの方々、そして友人たちに感謝申し上げます。

 山形のアジア館をどのように行き来するか、浸れるか??
 合い言葉は、ドキュメンタリー・ワンダー! ヤマガタ・ワンダー!

濱治佳・若井真木子