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ヌード・アット・ハート

Nude at Heart

- 日本、フランス/2021/日本語/カラー/DCP/106分

監督、撮影:奥谷洋一郎
編集:メアリー・スティーヴン
録音:黄永昌
音楽:鈴木治行
音響:ピエール・カラスコ
カラーグレーディング:フェルナンダ・グルゲル
VFX:佐藤文郎
製作:藤岡朝子、エリック・ニアリ、奥谷洋一郎
共同製作:アニー・オハヨン=デケル、ファリード・レズカラ
製作会社:シネリック・クリエイティブ、24images

「踊り子」と呼ばれるストリップ劇場のダンサーは衣装ケースを持って日本各地を巡り、楽屋で寝泊まりしながら演目を披露し、10日ごとに次の土地へと移動する。昭和の懐かしい空気に満ちたストリップの世界にかつての勢いはなく、劇場の数は減り続けるが、彼女たちが日夜研鑽を積みながら創るステージには、ひとときの華やかさが舞い戻る。踊り子たちが舞台の袖で見せる素顔、楽屋での日常、ストリップに託す思い、家族への愛情、すべてが一期一会の風景の一部としてここに記録される。(YM)



【監督のことば】本作『ヌード・アット・ハート』は、私が2013年から2017年まで全国各地のストリップ劇場に通って取材撮影を続け、その後に完成させた踊り子さんたちのドキュメンタリー映画『Odoriko』(2020)の国際配給版である。『Odoriko』は、実際に私が見たり聞いたりしたストリップ劇場の時間の流れや空間の厚みを、その私の体験に沿って忠実に表現した映画であり、また私たちと同時代に生きる踊り子さんたちと営業を続けるストリップ劇場のありのままの記録でもある。それに対し『ヌード・アット・ハート』はフランスの映画編集者メアリー・スティーヴン氏との共同作業により編集された作品である。この『ヌード・アット・ハート』の編集をメアリーさんに託す時に、私は一つのモチーフを深く掘り下げる編集構成を彼女に提案した。それはメアリーさん自身がつけた本作のタイトルにも反映されているように「裸」というモチーフである。私は取材当時にこのモチーフの元になる「こころ(の)ハダカ」という言葉を口にする踊り子さんに出会った。取材を重ね、ストリップ劇場の客席とその舞台裏である楽屋を行き来させてもらえるようになった私は、ステージ上ではショーとして観客に見せるために裸になり、楽屋では裸のままショーの準備をしたり日々の生活を送ったりしている踊り子さんたちを見るにつけ、あらためて何が彼女たちにとっての「ハダカ」であるのかを、考えるようになっていた。ストリップ劇場のステージで衣装を脱ぎ捨て肌をあらわにするショーは、踊り子さんたち自身の「ハダカ」=解放、につながっているのだろうか。古いものが取り壊されたり忘れ去られたりして新しいものに取って代わられることが日常的に繰り返される、またそのスピードが一段と速まっているこの消費社会において、文字通り「体を張って」仕事をしている現代の踊り子さんたちの裸が彼女たちにとってどのようなものであるかを、この映画を通して想像してもらえればと願う。


- 奥谷洋一郎

1978年、岐阜県中津川市生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。映画美学校ドキュメンタリー・コースで映画監督の佐藤真、筒井武文に学ぶ。長編ドキュメンタリー映画『ニッポンの、みせものやさん』(2012)で劇場公開デビュー。2作目の『ソレイユのこどもたち』(2013)でYIDFF 2011アジア千波万波特別賞、新藤兼人賞2013銀賞を受賞。2013年から4年間全国各地のストリップ劇場に通い、踊り子さんたちを取材撮影して完成させた3作目『Odoriko』が2020年にアムステルダム国際ドキュメンタリー映画際の長編コンペに選出、シネマ・デュ・レエルで「スキャム国際賞」と「文化無形遺産賞」をダブル受賞した。