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戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)

We Shall Overcome

- 日本/2015/日本語/カラー/DCP/129分

監督:三上智恵
撮影:大久保千津奈 
編集:青木孝文
監督補:桃原英樹
音楽:小室等
ナレーション:Cocco
プロデューサー:橋本佳子、木下繁貴
配給:東風
www.ikusaba.com

日本にあるアメリカ軍基地の74%が密集する沖縄。辺野古の海を埋め立て、新たに基地が造られようとしているなか、保革を越えた“島ぐるみ闘争”で新基地建設反対を掲げた翁長新知事が2014年12月に誕生する。新基地建設の抗議運動に参加する沖縄戦体験者で85歳の文子おばあは、工事トラックへ身を投げ出す。監督は文子おばあの胸中に耳を傾け、基地と折り合い生きざるを得なかった人々の複雑な思い、大切に育まれた豊かな暮らしと文化、運動のなかで絶えることのない唄やユーモアにも目を向け、“いくさ”に終止符を打ちたいと願う切なる思いを世界に問う。



【監督のことば】私たちの住むOKINAWAは日本の最南端に位置し、本州から見れば台湾に近い島々です。サンゴ礁が美しい観光の島でもありますが、第二次大戦末期はこの島で凄惨な地上戦が展開され、県民の4人に1人が犠牲になりました。その後も27年間アメリカに統治され、復帰したいまも日米の軍事基地が集中して置かれています。

 2014年、沖縄県民が反対するなか、アメリカ軍の新しい基地の建設が辺野古で始まりました。基地のゲート前で、または海上の工事を止めようと人々は毎日詰めかけて抗議をしますが、日本政府は機動隊や海上保安庁を動員して排除します。戦後70年間、沖縄はアメリカの戦争と運命を共にし、これ以上戦争はごめんだ、平和に暮らしたいと叫び続けてきました。しかし日米同盟の名の下に沖縄の民意は圧殺され続けています。

 それでもこの年、県民は党派を超え、島ぐるみで立ち上がりました。巨大な権力を前に、時に歌い、踊り、笑いながら、苦しい闘いのなかでもおおらかでしなやかな民衆の力でそれを超えていきます。“We Shall Overcome”を歌いながら。

 世界中に、圧倒的な権力と闘う人々がいます。地域が分断され、口をつぐむ人がいても、人間の力で繋がりを取り戻していく。権力が対立の構図を作っても、それを超えて人間同士であろうとすることは希望です。沖縄の闘いにはその人間の力が満ち満ちている。日本は知っていても沖縄は知らないという国の人々にも、それを伝えるチャンスを頂いたことに深く感謝します。


- 三上智恵

ジャーナリスト、映画監督。1987年、アナウンサーとして毎日放送に入社。95年、琉球朝日放送の開局時に沖縄へ移住。同局のローカルワイドニュース番組「ステーションQ」のメインキャスターを務めながら、『海にすわる 辺野古600日の闘い』『英霊か犬死か 沖縄から問う靖国裁判』など、沖縄の文化、自然、社会をテーマに多くのドキュメンタリー番組を制作。2010年、日本女性放送者懇談会の放送ウーマン賞を受賞。2012年に制作した『標的の村 国に訴えられた沖縄・高江の住民たち』は、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル大賞など多くの賞を受賞。劇場版『標的の村』(2013)でキネマ旬報ベスト・テン文化映画第1位、YIDFF 2013で日本映画監督協会賞・市民賞をダブル受賞。現在は、フリーのジャーナリスト、映画監督として活動するほか、沖縄国際大学で非常勤講師として沖縄民俗学を講じる。