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ホース・マネー

Horse Money
Cavalo Dinheiro

- ポルトガル/2014/ポルトガル語、クレオール語/カラー/DCP/104分

監督:ペドロ・コスタ
撮影:レオナルド・シモイシュ、ペドロ・コスタ
編集:ジュアン・ディアス
録音:オリヴィエ・ブラン、ヴァスコ・ペドロソ
音楽:オイス・トゥバロイス
整音:ウーゴ・レイトン、イヴ・コヒア=ゲーディス
ミキシング:ブランコ・ネスコフ
製作:アベル・リベイロ・シャーヴィス
製作会社、配給:Sociedade Óptica Técnica
配給(日本国内):シネマトリックス cinematrix.jp/HorseMoney/

『コロッサル・ユース』に続き、リスボン郊外のスラム街フォンタイーニャス地区に暮らした老移民者ヴェントゥーラの記憶と苦しみを、ペドロ・コスタが清冽な眼差しのもとに描き出す。カーボ・ヴェルデから19歳で出稼ぎに出た彼が経験した1974年カーネーション革命とその後の曲折。廃虚と化した工場、監獄のごとき病院。過去と現在、そして未来へと亡霊的な時空間を彷徨い歩くヴェントゥーラの魂の軌跡が、高純度の人間愛と圧倒的な映画表現の中に立ち現れる。



【監督のことば】この映画の出発点は、ヴェントゥーラが語ってくれた話にある。1974年にポルトガルでカーネーション革命が起きたとき、私たちは同じ場所にいた。幸運にも私は若き少年として革命に飛び込み、そこで音楽、政治、映画、女の子たち、こうしたものすべてを同時に発見し経験することができた。私は幸せだった。路上で声を上げ、学校や工場の占拠に加わった。13歳だったし、そのために私の目は曇っていた。友人のヴェントゥーラが同じ場所で涙にくれ、恐怖に苛まれながら、移民局から身を隠していたことを理解するのに、30年もかかってしまった。長く深い眠りに落ちていったその場所、彼が「牢獄」と呼ぶもののなかで過ごした時間の記憶を、ヴェントゥーラは語ってくれた。これ以上は言えない。すべては映画のなかにある。撮影は荒れ、私たちはよく震えていた。ヴェントゥーラは必死に思い出そうとしているが、これが最良のものとは限らない。だから私たちは、忘れるためにこの映画を作ったのだと思う。本当に忘れるために、それと決別するために。


- ペドロ・コスタ

リスボン生まれ。大学で歴史を専攻していたが、リスボン映画国立学校で教鞭をとっていた詩人・映画作家のアントニオ・レイスの授業に出席すべく進路を変更する。1989年、最初の作品『血』がヴェネチア国際映画祭でワールド・プレミア上映される。カーボ・ヴェルデで撮影した長編第2作『溶岩の家』(1994)は、1994年のカンヌ映画祭ある視点部門に出品。その他の長編作品に『骨』(1997)、『ヴァンダの部屋』(2000、YIDFF 2001山形市長賞)、『映画作家ストローブ=ユイレ/あなたの微笑みはどこに隠れたの?』(2001)などがあり、『コロッサル・ユース』(2006、YIDFF 2007)はカンヌ映画祭コンペティション部門で正式上映された。また、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセらとともにオムニバス作品『ポルトガル、ここに誕生す〜ギマランイス歴史地区』(2012)の一篇を監督している。最新作である本作は、2014年のロカルノ映画祭で監督賞を受賞した。