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[インド、日本]

ラダック それぞれの物語

Each Story

- インド、日本/2014/ラダック語、ヒンディー語/カラー/Blu-ray/40分

監督、脚本、撮影、編集、提供:奥間勝也
録音:ハルシャッド・ヴァユーダ
照明:寺嶋隆人

少年ジグメットとスタンジンの夏休みの宿題は、北インドのラダックに伝わる叙事詩「ケサル物語」について調べること。川遊びをしたり都会に出たりしながら、周囲の大人に尋ねて回るジグメットとスタンジン。二人の少年は「ケサル物語」を入り口に、大人たちが語る“それぞれの物語”を受け取っていく。本作は、滞在型アートプロジェクト「アースアートプロジェクト・イン・ラダック2014」で製作された。



【監督のことば】この映画は、標高3,500メートルの山々に囲まれたインド北部・ラダック地方の村に、約2週間滞在しながら行われたアートプロジェクトで製作したものです。

 村を歩き、村人から話を聞くうちに、私は現地に口承で伝わる「ケサル物語」についての映画を撮ろうと思うようになりました。世界一長い物語とも言われている「ケサル物語」。私は「ケサル物語の中でどのエピソードが印象に残っているか」を軸に、村人に話を聞くことに決めました。各々が歩んできた人生によって、選択するエピソードに特徴が出ると面白いかもしれない、と思ったからです。

 結果的には“ケサル物語を憶えている人はほとんどいない”という事実に突き当たり、当初のもくろみは崩れます。しかし「ケサル物語」を糸口に、村人たちそれぞれが記憶する物語を聞くことができたと思っています。

 そこに通底しているのは、伝統的な暮らしが息づくラダックにもグローバルな経済原理が急速に入り込み、生活が大きく変化しているという事実です。豊かな自然を活かした観光業や国境沿いにある軍事基地によって得られる外貨は、村人の生活スタイルを変えるきっかけになっています。

 「夏休みの宿題でケサル物語を聞いて回る子どもたち」というフィクションを導入することで、土地のことを知ろうとする子どもに、異邦人である私自身の目線を重ね合わせました。

 村人である彼/彼女らの言葉と、言葉の隙間から滲み出た想いを、私の想像力に乗せて表現し、村人らと私の共同の物語としてこの映画を制作しました。


- 奥間勝也

1984年、沖縄生まれ。琉球大学で文学を学んだ後、2011年に上京。テレビドキュメンタリーなどをディレクションする傍ら、個人でも映像作品を制作している。2011年に制作した中編映画『ギフト』は、YIDFF 2011、ヒロシマ平和映画祭2012、ヴィジョン・デュ・レール2012(スイス)、杭州青年映画祭2012(中国)など国内外で上映された。2015年には終戦70年企画として、原爆をテーマにした映画『ひろしま』(1953)についてのテレビドキュメンタリーを制作、発表した。