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エクス・リブリス ― ニューヨーク公共図書館

Ex Libris--The New York Public Library

- アメリカ/2016/英語/カラー/DCP/205分

監督、編集、録音:フレデリック・ワイズマン
撮影:ジョン・デイヴィ
提供:Zipporah Films www.zipporah.com

前作『ジャクソン・ハイツ』で、ニューヨーク・クイーンズの多民族居住地域を映像に収めた匠、フレデリック・ワイズマンが、本作ではニューヨーク公共図書館という“世界”を題材に選んだ。ニューヨークの各地にある図書館を軽やかに撮影し、デジタル時代到来により図書館が取り組むさまざまな試みを紹介していく。図書館の運営会議、地域ごとに個性を打ち出した討論会、講演などを描きながら、公共図書館の現実を浮き彫りにするとともに、図書館に集う多様な民族を映し出し、必然的にアメリカの現在が明らかになる。



【監督のことば】アメリカの公共図書館は変化し続けており、私が若かった時分とはずいぶん異なっている。私の記憶では、図書館といえば本を探す場所なのだが、いまやそこはずっと多くのものを提供する場と化している。この映画の撮影を通じて私が驚愕したのは、図書館の門戸をくぐる人間に、きわめて多種多様なサービスや機会や体験が提供されているということだ。今日における図書館は、子どもたちのための課外プログラムや、言語や市民活動、ビジネスやプログラミングといった大人向けの講習を備えたコミュニティセンターとなっている。アメリカが現在置かれている政治情勢がどうであれ、この図書館はいまなお、社会的包摂や民主主義、表現の自由といったもののひとつの理想形であり続けている。


- フレデリック・ワイズマン

1930年生まれのワイズマンは、映画監督として主にアメリカの制度に焦点を当てた作品をこれまでに43本制作しているほか、演劇の演出も手掛けている。映画作品は、『チチカット・フォーリーズ』(1967)、『高校』(1968)、『法と秩序』(1969)、『病院』(1969)、『基礎訓練』(1971)、『エッセネ派』(1972)、『少年裁判所』(1973)、『霊長類』(1974)、『福祉』(1975)、『肉』(1976)、『パナマ運河地帯』(1977)、『シナイ半島監視団』(1978)、『軍事演習』(1979)、『モデル』(1980、YIDFF '91特別招待作品)、『セラフィータの日記』(1982)、『ストア』(1983)、『競馬場』(1985)、『視覚障害』(1986)、『聴覚障害』(1986)、『適応と仕事』(1986)、『多重障害』(1986)、『ミサイル』(1987)、『セントラル・パーク』(1989)、『臨死』(1989)、『アスペン』(1991)、『動物園』(1993、YIDFF '93 山形市長賞)、『高校2』(1994)、『アメリカン・バレエ・シアターの世界』(1995)、『コメディ・フランセーズ ― 演じられた愛』(1996、YIDFF '97 特別賞)、『パブリック・ハウジング』(1997)、『メイン州ベルファスト』(1999、YIDFF '99 山形市長賞)、『DV ― ドメスティック・バイオレンス』(2001、YIDFF 2001 特別招待作品)、『DV 2』(2002、YIDFF 2003 特別招待作品)、『最後の手紙』(2002)、『The Garden』(2004)、『州議会』(2006)、『パリ・オペラ座のすべて』(2009)、『ボクシング・ジム』(2010)、『クレイジー・ホース・パリ 夜の宝石たち』(2011)、『At Berkeley』(2013)、『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』(2014)、『ジャクソン・ハイツ』(2015)、『エクス・リブリス ― ニューヨーク公共図書館』(2017)。

 2016年には米アカデミー賞より名誉賞を贈呈され、現在までに、マッカーサー基金フェロー、アメリカ芸術科学アカデミー・フェロー、グッゲンハイム奨励金受給者、アメリカ芸術文芸アカデミー名誉会員といった栄誉ある立場に名を連ねている。4度のエミー賞をはじめ多数の受賞歴があり、近年では、パリ・コメディ・フランセーズで、ベケットの『しあわせな日々』やワシーリー・グロスマン原作の戯曲『最後の手紙』を演出。『最後の手紙』はニューヨークのシアター・フォー・ア・ニュー・オーディエンスでも上演された。さらに2017年には、第一作『チチカット・フォーリーズ』に着想を得て制作されたバレエ作品がニューヨーク大学のスカーボール・シアターで初披露されている。