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[日本]

風のたより

On to the Next Step: Lives After 3.11

- 日本/2015/日本語/カラー/Blu-ray/180分

監督、編集、ナレーション、製作:田代陽子
撮影:田代陽子、一坪悠介
音楽:WATER WATER CAMEL
整音:柳屋文彦
製作会社、提供:風の映画舎

2011年の震災後の2年間。北海道・大沼の山田農場では山羊や羊を育ててチーズを作っている。さらに洞爺湖畔の天然酵母のパン屋の家族、大沼対岸の青森・大間の漁師の家族、三者のそれぞれの生活を追う。大間原発建設に対する反対運動や裁判、原発敷地内のあさこハウス等も描かれるが、カメラはあくまでも日々の生活や、生活者としての日常の言葉を丹念に映し出しており、そこに原発への不安が通奏低音のように流れている。



【監督のことば】2011年3月11日。あまりの衝撃で動くことができなかった。不安と怒りの重苦しい時間が永遠に続いていくようだった。私に何ができるのか……。今を記録しよう。そう思った。

 まず、映画を通して縁ができた方たちに、製作協力していただきたい旨をその時の気持ちと共にしたため、まだ騒然としていた3月半ば過ぎ、恐る恐る手紙を出した。その反応は嬉しいものだった。大いに勇気をいただいた私は4月、話を聞くことから始めようと撮影をスタートした。人の数だけ世界があり、物語があった。なぜ撮るのか、何を撮りたいのか、私はどこに立っているのか、いつも自問自答していた。被写体の方々のそれぞれのフィールドで濃密な時間を共に過ごすうちに、私のフォーカスは定まっていった。いつの世でも、どんな状況でも最善を尽くし、喜びや面白さを共有して豊かに生きたい。そんな気持ちになっていった。

 2年間で撮ったものは400時間。ひたすら素材と向い合う日々を経て、3時間の映画が生まれた。この長い映画を上映してくださり、次へつないでくださる方がいらっしゃるおかげで、今、私は『風のたより』と共に細々と全国を歩いている。日本は広い。そして美しい。上映の旅で、日本の食の美味しさ、土地の瑞々しさ、文化の奥深さを体感する。相変わらず自問自答の日々だが、今、この時代を共に生きる人たちと一緒に、映画というツールで場を作り、出会い、交流し、そこから新たな物語が始まっている。私もやっと、次のステージに立ったようだ。


- 田代陽子

1996年、北海道の新得町で開催された第1回「新得空想の森映画祭」で、ドキュメンタリー映画と出会う。その後、同映画祭の事務局スタッフを務めながら、藤本幸久監督のもと、『森と水のゆめ 〜大雪・トムラウシ〜』(1999)では助監督として、『闇を掘る』(2001)では、編集・仕上げ作業、興業を通して映画づくりを学ぶ。2002年に初の監督作品の製作を開始し、2008年、全129分の『空想の森』が完成。ミニシアター、映画祭、自主上映会で全国を上映して歩く。2011年3月に本作の製作を始める。これを機に「風の映画舎」という屋号をつけ独立。2015年秋、本作が完成。