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[アフガニスタン]

ベナジルに捧げる3つの歌

Three Songs for Benazir

- アフガニスタン/2021/パシュトゥーン語、ダーリ語/カラー/デジタル・ファイル/22分

監督、製作:グリスタン・ミルザイ、エリザベス・ミルザイ
撮影:エリザベス・ミルザイ
編集:メラニー・アナン、クリストフ・ヴェルンケ
録音:グリスタン・ミルザイ
音楽:カイス・エサール
製作:オマール・ムリック、ジャミール・レザエイ、ホマユン・シャマール
提供:Mirzaei Films www.threesongsforbenazir.com

アフガニスタン、カブールの国内避難民キャンプに暮らす若い夫婦。青年シャイスタは愛する妻ベナジルのために歌を捧げ、幸せいっぱいのふたり。一方で、キャンプ上空に漂う怪しげな飛行船が、この地で暮らす人びとの生活が常に監視され支配下にあることを物語る。シャイスタは部族で初めてアフガン国軍に入隊するという夢があるが、タリバンによる報復を恐れる家族から反対される。ベナジル、そして新たに宿った命を守るため彼が選んだ苦渋の選択は、4年後に深刻な事態となり……。それでもなおシャイスタはベナジルへの変わらぬ愛を歌い続ける。(SA)



【監督のことば】もう何年もの間、仕事をしている時間も、起きている時間も、この情熱をかきたてるプロジェクトが私の頭から離れなかった。この小品は、愛にまつわる大きな概念をすべて抽出し、カブールの難民キャンプに暮らす2人のティーンエイジャー、シャイスタとベナジルという意外なかたちに結実させている。これらの顔を以前に見たことがあると感じるかもしれない。その服装、景色、砂埃――通常は、戦争とニュースの言語で語られる。しかし私はここの出身だ。そして私は、この世界を語る、使い古され、空っぽで、時代遅れでさえあるイメージを引き剥がそうとしてきた。この世界は私の世界だ。そして映画を通して、私たちの世界になる。若さゆえの愛は、どんな姿をしているのか。彼らはこの世界でほとんど何も持っていないが、心の中に世界を持っている。これこそが撮る価値のある映画だ、と私は考えた。私自身の血統もこの地に流れ、さらに私たちが逃れた先のイランにまで到達している。私の人生の突端、この世界の枠組みの上には、ロシア製の地雷で命を落とした父がいる。私は早く大人にならなければならなかった。ちょうどシャイスタと同じように。夢は大きく、映画の狂気と可能性を内包する。5年にわたってこの映画を粘り強く追求し続けたのは、それが目的だったからだ。カメラの反対側に映された世界、私ならわかるかもしれないが、あなたはおそらくわからない世界を見る。数字ではなく心の世界。少女のために進んでいく夢と衝動の世界。男の世界だけではない。爆弾の世界でもない。しかし結局のところ、少年の唇で、静かに、毅然として奏でられる歌の世界だ。


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グリスタン・ミルザイ、エリザベス・ミルザイ

グリスタン・ミルザイはアフガニスタンに生まれ、難民としてイランで育つ。タリバン政権崩壊後のカブールで初めて誕生した独立系新聞「カブール・ウィークリー」で編集長助手を務めた。『アフガン零年』(2003)で受賞歴のある映画監督セディク・バルマクの薫陶を受ける。エリザベス・ミルザイは8年以上にわたってカブールに暮らす。フィルム・インディペンデントでフェロー、サンダンス・インスティテュートでアドバイザーを務める。ヴェネチア国際映画祭やトロント国際映画祭などで上映された作品の撮影も手がけている。現在はカリフォルニア在住。ふたりの初の共作『Laila at the Bridge』(2018)はIDFAベルタ基金から助成金を受け、ロカルノ国際映画祭、エディンバラ国際映画祭で上映された。またコペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭(CPH:DOX)、ベルゲン国際映画祭、サンタバーバラ国際映画祭など多数の映画祭で賞を獲得。