English
YIDFF 2015 アジア千波万波
太陽の子
ジム・ランベーラ 監督インタビュー

白と黒からにじみ出る姿


Q: 本作は、全編にわたってモノクロの映像で構成されていますね。

GL: 僕が子どもの頃に見た写真で、忘れられないものがあります。幼き日の父が写ったモノクロの写真です。父の隣には、フィリピンの祝祭で売られている大きな紙細工の馬が置いてあったのですが、僕にはその馬が赤色で塗られているように見えたのです。のちにその馬は本当に赤色で塗られていたと聞きました。しかし、僕はその馬をモノクロの写真でしか見ていません。モノクロの写真や映像は、ぼんやりとした大昔の記憶のようなものなのだと思います。人は、自らの記憶からあらゆることを思い浮かべます。モノクロで残された写真や映像を見たとしても、その赤い馬のように色を思い浮かべることがあるのです。

Q: 本物の動物の映像が使われている一方で、人間が動物の動きを真似たり鳴き声が付けられた映像もありました。これらは何かしらの比喩なのでしょうか?

GL: 動物はモノクロの映像で美しく見えるから、という理由もあります。また、僕の地元であるバタンガス州には、白山羊を探して見つけることができれば、見つけたその1日は縁起が良くなるという伝説があります。作中の人々はその伝説に基づいて、験を担ぐために山羊の鳴き声などを真似しているのです。とはいえ、たった1日の幸運のために、なぜ人々は時間をかけて、必死に白山羊を探しているのでしょう。矛盾していると思いませんか?

Q: 白山羊の真似をしている人もいます。彼も縁起が良くなることを望んでいるのでしょうか?

GL: 白山羊を真似している彼は、アルビノの子です。生まれつき白い肌を持つ彼の目的は、いたずらですよ。白山羊を探している人が彼の姿を見ると、白山羊だと捉えてしまう。彼はいつも肌の色を理由に「アメリカ人だ」とからかわれているから、仕返しのためにからかい返しているのです。映画には描かれていませんが、そういった背景もありました。

Q: 本作の序盤と終盤に葬儀の映像がありますね。なぜその映像を使われたのでしょうか?

GL: あのシーンで弔われている人は、トーゴという人です。プーゴ&トーゴはフィリピンの有名なお笑いコンビで、代表的なギャグに「ヘイ、トーゴ。誰を待っているんだい?」「アンクル・サム(アメリカ人)だよ」というものがあります。彼らが人気を集めた時代は、日本占領時代と重なっています。当時のフィリピン人は、アメリカ人によって救われることを待っていました。その後、実際に救われてから、フィリピン人はアメリカ人を正義の味方として見るようになり、アメリカ人が持つ白色の肌を特別なものとするようになったのです。トーゴの葬儀は、そのような時代の変化を象徴していると思うのです。

Q: 今のフィリピン人は、アメリカという国をどう捉えていますか?

GL: ほとんどのフィリピン人にとって、アメリカは夢の国です。自国を出てアメリカに行きたいと思っています。これは、自国のなかにある問題を、直視したくないことの表れでしょう。そのうえ、僕らの国は様々な国によって征服されていたために、自らのアイデンティティを、うまく作ることができずにいます。自国が抱える問題も含めて認めることは、善と悪、白人と黒人の二面性を考えればとても難しいことです。それでも今のフィリピンでは、誰もが自らのアイデンティティを求めて、日々もがいています。

(採録・構成:薩佐貴博)

インタビュアー:薩佐貴博、原島愛子/通訳:吉富ポール
写真撮影:キャット・シンプソン/ビデオ撮影:平井萌菜/2015-10-11