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  • 賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
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  • 審査員
    賈樟柯(ジャ・ジャンクー)


    -●審査員のことば

     子どもの頃から、道を行きかう人々を見ているのが好きだった。慌しく往来する知らない人々、彼らは不思議にも心暖まる印象を与えてくれた。時に、突然、想像する。彼らは私と似たような暮らしをしているのだろうか? 彼らの部屋、食べるもの、彼らのテーブルに置かれているもの、彼らの家族、そして悩みは私と同じなのだろうか……。

     私がひどく恐れるのは、自分が他人に対する好奇心を失うことだ。ドキュメンタリーの制作は、そんな恐怖感を打ち消すのに、一役買ってくれる。人間は、えてして他人に対する親近感を失いがちだ。私たちの世界では、数人ばかりの人々がドキュメンタリーによって、生活を切りひらき、私たちの孤独感を打ち消してくれる。さらに大事なことがある。毎回、私がドキュメンタリーを撮る時、自分の身体からもはや失われてしまいそうな正義感や勇気が、体内へと立ち戻り、私自身もそのひとりだが、一人ひとりの命には尊厳が満ちていることを実感している。

     映像はある種、記録の手段だ。ドキュメンタリーは私たちが生きてきた痕跡を留める。それは忘却に対抗するための手段のひとつでもあるのだろう。


    1970年、中国汾陽に生まれ。18歳の時に山西省太原の芸術大学に入り、油絵を専攻。1993年に北京電影学院に入学しインディペンデント映画製作グループを結成。『小山の帰郷』、
    『一瞬の夢』を監督。『一瞬の夢』は、1998年のベルリン国際映画祭でヴォルフガング・シュタウテ賞(最優秀新人監督賞)とNETPAC賞を受賞したのをはじめ、プサン国際映画祭、バンクーバー国際映画祭、ナント三大陸映画祭で連続してグランプリを獲得し、国際的に大きな注目を集めた。次作『プラットホーム』(2000)はヴェネチア国際映画祭でNETPAC賞を受賞、ナント、ブエノスアイレスの両映画祭でグランプリを獲得。その他、チョンジュ国際映画祭の企画により製作した『三人三色』(2001、YIDFF 2001にて上映)の1編「イン・パブリック」、カンヌのコンペティション部門に出品された『青の稲妻』(2002)などがある。本作は彼の作品で初めて中国で劇場公開された作品である。


    世界

    The World
    世界

    - 日本、フランス、中国/2004/北京語/カラー/35mm(1:2.35)/133分

    監督、脚本:賈樟柯(ジャ・ジャンクー)
    撮影:余力為(ユー・リクウァイ)
    編集:孔勁蕾(コン・ジンレイ)
    録音:張陽(チャン・ヤン) 
    美術:呉黎中(ウー・リーチョン)
    出演:趙濤(チャオ・タオ)、成泰燊(チェン・タイシェン)、王宏偉(ワン・ホンウェイ)
    エグゼクティブ・プロデューサー:森昌行、ヘンガメ・パナヒ、周強(チョウ・キョン)
    製作:吉田多喜男、市山尚三
    製作会社:バンダイビジュアル、TOKYO FM、電通、テレビ朝日、ビターズ・エンド、ルーメン・フィルムズ、エクストリーム・ピクチャーズ、オフィス北野
    配給(日本国内):オフィス北野、ビターズ・エンド

    北京郊外にある「世界公園」はエッフェル塔やピラミッドなど世界各地の観光モニュメントのレプリカが立ち並ぶテーマパーク。そこでダンサーとして働くタオは、世界公園の警備主任として働く恋人のタイシェンと上京したものの、ふたりの関係はいまや微妙。転職、結婚などの決断をしていく友人やダンサー仲間たち。そしてタイシェンは、他の女性に心を動かされていき……。憧れ、不安、嫉妬、失望、そしてささやかな喜び。様々な思いを抱えながら、ひたむきに踊り続けるタオ。北京の街も2008年のオリンピック開催を前に日々変わってゆく。