やまがたと映画
Part 1 蔵王を撮った男・塚本閤治
Part 2 戦前のやまがたを見る
Part 3 やまがた美女列伝
Part 4 やまがた名画館
Part 5 やまがた・映像の未来
Part 6 澤登 翠のサワトーキー:『あゝ故郷』を聴く!
やまがたの横顔
このカタログを手にとってページを開いているということは、あなたはドキュメンタリー映画祭の観客、または監督として山形を訪れている最中なのでしょうか。それとも、何年も山形に暮らしている方なのでしょうか。ようこそ、山形国際ドキュメンタリー映画祭へ。挨拶代わりに質問をさせてください。
あなたは、どのような山形を知っていますか?
山形国際ドキュメンタリー映画祭が開催されてまもなく20年。けれども、開催地である山形を皆さんにお知らせする機会はあまり多くありませんでした。どうせなら、映画や映像を通して、山形という風土とそこに暮らした人々をより深く知ってもらいたい。そんな思いのもと、今回「やまがたと映画」というプログラムが誕生しました。
第1回目のテーマは「戦前のやまがた」。第二次世界大戦前、半世紀以上昔に撮影された個人映画や記録映画、果ては劇映画やニュース映画。昭和初期の様々な映像におさめられた“やまがた”、暮らす人々さえも初めて目にするであろう“やまがた”が、ここには在ります。
昭和10年(1935)に、山形を代表する山、蔵王に発生する自然現象“樹氷”を撮った映画監督がいました。監督の名は塚本閤治。彼の撮影した『Mount Zao』は海外の映画祭で多くの賞を受賞し、樹氷と山形を世界中に知らしめました。永い間、幻とされてきた『Mount Zao』、そして塚本閤治作品を「やまがたと映画」のオープニングで特集します。
「戦前のやまがたを見る」では様々な方が撮影した“戦前の山形”が上映されます。上山市を撮影した貴重なフィルム、そこには華やかりし頃の競馬場や、かつての行楽地が映っています。石原莞爾が満州にて撮影した8mmフィルムと、終戦直後の石原のインタビュー映画では、第二次大戦と戦後の日本についての、歴史的な証言を肉声で聞くことができます。
「やまがた美女列伝」では、ともに山形出身の、戦前の銀幕を飾った名女優と、日本の歌謡曲の起点となった流行歌手の映画を上映します。「やまがた名画館」では名優が熱演をふるう、山形をロケ地にした作品を上映。「やまがた・映像の未来」では戦前から離れ、現在を生き、山形を撮り続ける作家の作品から“山形を撮るということの意味”を検証していきます。「澤登翠のサワトーキー」ではいまやそのフィルムが失われて久しい、山形が舞台の幻の映画を、活弁による音声の再現という前代未聞の方式で21世紀に復活させます。
当然ながら、今回の「やまがたと映画」だけで山形のすべてがわかるわけではありません。けれども、このプログラムを観ることが、新しい山形を知るきっかけに、自分だけの山形を心に持つきっかけになると、我々は思っています。「やまがたと映画」を観終わったあと、あなたが山形国際ドキュメンタリー映画祭と、その開催地である山形を、より好きになっていることを、強く願っています。
最後に「やまがたと映画」に関わってくださった各市町村資料館や視聴覚センターの皆様、慌しくも不躾なお願いに快く応じてくださった関係者各位に、この場を借りて篤く感謝申しあげます。
斎藤健太(株式会社デジコンキューブ)