english

インターナショナル・コンペティション


応募総数:99の国・地域より969作品

(英語題アルファベット順)

 山形映画祭第1回目からのプログラム。世界中から長編を対象に募集し、応募された969本から厳選。バラエティに富む世界の最先端の表現が凝縮した珠玉の15本を紹介します!

審査員
ペドロ・コスタ(ポルトガル/『ヴァンダの部屋』『コロッサル・ユース』監督)
蓮實重彦(日本/映画評論家、フランス文学者)
アラニス・オボンサウィン(カナダ/『カネサタケ、抵抗の270年』『アベナキの人々』監督)
キドラット・タヒミック(フィリピン/『悪夢の香り』『虹のアルバム』監督)
アピチャッポン・ウィーラセタクン(タイ/『真昼の不思議な物体』『世紀の光』監督)

アレンテージョ、めぐりあい
Encounters
ポルトガル、フランス/2006/ポルトガル語/カラー、モノクロ/ビデオ/105分
監督:ピエール=マリー・グレ Pierre-Marie Goulet

1950年代後半、ポルトガル現代詩の若き雄アントニオ・レイスと、ポルトガル民族音楽のコルシカ人研究者ミシェル・ジャコメッティ、そして映画監督のパウロ・ローシャたちが、ポルトガル南部アレンテージョ地方ペログアルダ村民の歌に魅せられて次々とその村を訪れた。パウロ・ローシャの映画を挿みながら、レイスたちが通った道や真紅の花で飾られた野原、静かな海と村のたたずまい、哀しみをたたえた歌や詩が情感たっぷり流れ、我々を清涼感で満たしてくれる。

先頭

鳳鳴(フォンミン) ― 中国の記憶
FENGMING A Chinese Memoir
中国/2007/中国語/カラー/ビデオ/183分
監督:王兵(ワン・ビン) Wang Bing

ひとりの老女が雪道を歩きアパートへ向かう。赤い服を身にまといソファーに腰を掛けた彼女の名は、和鳳鳴(ホー・フォンミン)。地方の新聞記者として働いて結婚したが、同じく記者である夫の執筆した記事が原因で、反革命分子のレッテルを貼られ、ふたりは別々の強制収容所へ送られてしまった……。1950年代以降の中国で起きたふたつの粛正運動で数々の迫害を受け、1974年に名誉回復するまでの、約30年にわたるひとりの女性の壮大な物語が綴られていく。9時間の超大作『鉄西区』で本映画祭2003大賞を受賞した王兵(ワン・ビン)監督の最新作。

先頭

彼女の墓に花をそえるのは私
I Am the One Who Brings Flowers to Her Grave
シリア/2006/アラビア語/モノクロ/ビデオ/110分
監督:ハーラ・アルアブドッラー、アンマール・アルベイク Hala Alabdalla, Ammar Albeik

1981年に故郷シリアを後にしてから一度も帰郷が果たせぬハーラは、カメラを持つ若い友人アンマールと共にフランスで映画を撮り始める。25年間国外追放されている夫で画家の創作風景、祖国を離れたまま初老を迎えようとする女性の友人たちの親密なインタビュー。客観的な視点を拒むかのように、極端なアップと手持ちを多用したカメラは自由に時空を滑空し、詩文と生活の中の詩心を発見しながら、故郷への愛を詠い、容赦ない時間の流れを哀悼する。

先頭

リック・ソルト ― 僕とばあちゃん
Lick Salt--A Grandson's Tale
カナダ/2006/英語/カラー、モノクロ/ビデオ/78分
監督:ライアン・フェルドマン Ryan Feldman

祖母セシルと仲たがいする父から、交際を固く禁じられていた息子ライアン・フェルドマン監督。15年ぶりに祖父の葬式でセシルと顔を合わせ、ふたりは交流を再開する。老境にあるユダヤ人老女の天真爛漫な個性、死への不安やおびえ、写真に語りかけて写っている人物のために食事を用意するなどの認知症からくる妄想。セシルに何かと頼りにされ手を焼くライアンは一方で転職や引越を繰り返し、将来への不安な心情が露わになっていく。祖母と孫の心の絆をユーモラスに描いた私的ドキュメンタリー映画。

先頭

M
M
アルゼンチン/2007/スペイン語/カラー、モノクロ/35mm/150分
監督:ニコラス・プリビデラ Nicolás Prividera

1976年、アルゼンチン軍事政権下。突如消息不明になったマルタ・シエラ。当時6歳だったマルタの息子、ニコラス・プリビデラ監督は、この謎について関係機関や当時の同僚、地下組織運動仲間を訪ねながら、失われた母親像の破片を集めていく。映画はマルタ失踪事件の謎がサスペンス風に描かれているだけでなく、軍事クーデターで多くの人が殺され行方不明になった状況など、アルゼンチンの歴史があぶり出される。記憶を決して風化させない監督の姿勢が感動を誘う。

先頭

僧院物語
The Monastery
デンマーク/2006/デンマーク語、英語、ロシア語/カラー/35mm/84分
監督:パーニレ・ローセ・グロンケア Pernille Rose Grønkjær

ヴィー老人が「僧院」にするため50年前に購入したデンマークのヘスビアー城は、彼の念願が叶い、教会・修道院としてロシア正教が相続することが正式に決まる。準備のため美しいロシア人尼僧アムヴローシヤたちがやってきて、その夢はすんなり叶うと見えたが……。82歳まで恋愛経験のまったくない独身老人は、異なる文化と価値観を持つアムヴローシヤと幾度となく衝突してしまう。しかし不器用ながらも少しずつ歩み寄って行くヴィーを、映画はユーモアと優しさで包み込み描いていく。

先頭

ミスター・ピリペンコと潜水艦
Mr. Pilipenko and His Submarine
ドイツ/2006/ロシア語、ウクライナ語/カラー/ビデオ/90分
監督:ヤン・ヒンリック・ドレーフス、レネー・ハルダー Jan Hinrik Drevs, René Harder

ウクライナでは不可能を意味するとき「草原にある潜水艦のよう」と言う。ウラジーミル・ピリペンコはウクライナの小さな村に住む、62歳の年金生活者。潜水艦を作って黒海に潜るのを30年間夢見ている。密かに貯めた年金を使い、古い部品や金属を集めて潜水艦作りに精を出す。しかし、妻からはぞんざいに扱われ、村人からは嘲笑される。それでもあきらめずに潜水艦をおんぼろトラックに乗せ、大草原を進み、400km先の黒海で勝負にでる。ピリペンコは不可能を可能に変えることが果たしてできるのか? 男のロマンを追い求めたアドベンチャームービー。

先頭

紙は余燼(よじん)を包めない
Paper Cannot Wrap Up Embers
フランス/2006/カンボジア語/カラー/ビデオ/86分
監督:リティー・パニュ Rithy Panh

カンボジア・プノンペン。娼婦になった女性たちの寝所。彼女たちは家族や金のために身を売り、客や雇い主のマダムから暴力を受け、エイズ感染など悪夢の日々を過ごしている。内戦の傷深く、腐敗したカンボジア社会の底辺に暮らす瀕死の魂たちへの鎮魂詩が、哀しく、時に美しく奏でられる。祖国カンボジアと向きあい続けるリティー・パニュ監督最新作。インターナショナル・コンペティションへは過去最多の4度目の参加

先頭

旅 ― ポトシへ
Potosi, the Journey
イスラエル、フランス/2007/英語、スペイン語、ヘブライ語/カラー、モノクロ/35mm/246分
監督:ロン・ハヴィリオ Ron Havilio

1970年、ブエノスアイレスで結婚式を挙げた監督ロン・ハヴィリオと妻ジャクリーンは、バックパックとスチール・カメラを手にアンデス山脈へ向かった。その道中でボリビアのポトシという鉱山の街に出会う。29年後、ふたりは娘3人とポトシを訪ね、過去と現在を繋げていく。静寂なアンデスの風景、ゆったりとした音楽。それらと相反して厳しい気候に生きる人々。家族はゆっくりと歩み心を通わす。家族の旅を描いたロード・ムービー。映画祭'97大賞受賞作『エルサレム断章』から10年。ロン・ハヴィリオ監督の待望作。

先頭

主人公
Protagonist
アメリカ/2006/英語、ドイツ語/カラー/35mm/90分
監督:ジェシカ・ユー Jessica Yu

ゲイの伝導師、ドイツ人テロリスト、カンフーオタク、銀行強盗。極端な過去を持つ4人が語る波乱万丈な「人生」という長い放浪旅。それぞれ小さな頃から「真理」を極端に追求して生きてきたが、やがてその限界を悟っていく。エウリピデスの描いたギリシャ悲劇の世界観から生み出された本作は、古代ギリシャ演劇の仮面人形劇を交差させた趣向を凝らした構成で、一見バラバラな4人の話を共鳴させ、言葉の躍動感を見事に描く。1997年アカデミー賞短編ドキュメンタリー映画受賞監督による最新作。

先頭

革命の歌
Revolution
フィンランド/2006/フィンランド語/カラー、モノクロ/35mm/80分
監督:ヨウコ・アールトネン Jouko Aaltonen

革命歌を歌う熟年者たち。学校、図書館、スーパーや夜の街で堂々と歌う彼らは一体何者なのか? 1960年後半、理想主義に燃え社会主義運動に触発された歌と数々の音楽グループが誕生した。40余年を経て、若く美しい活動家だった彼らも今は中高年に。揚々と歌う当時の姿と現在の職場での歌いっぷりをあわせ見せ、「よりよい世界」を求めていた時代を懐かしみ風刺するフィンランド発ミュージカル・ドキュメンタリー映画。この映画を観た後は、誰もがこの革命歌を口ずさみたくなるだろう。

先頭

あなたが去ってから
Since You Left
パレスティナ、イスラエル/2006/アラビア語、ヘブライ語、英語/カラー/ビデオ/58分
監督:ムハンマド・バクリ Mohammad Bakri

イスラエル在住パレスティナ人俳優である監督は、彼の創作に影響を与え親交の深かった故エミール・ハビービー(パレスティナ人作家・政治家)の墓の前で、自らに生じた出来事を語りだす。バクリーのふたりの甥がテロ事件への関与で訴追され、自作ドキュメンタリー映画『ジェニン、ジェニン』はイスラエルでの上映禁止の憂き目に会うという苦闘が続いていた。それでも監督はハビービーの言葉をかみしめながら、イスラエル・パレティチナがそれぞれの愚かさに気づき互いに向き合うことを訴える。

先頭

垂乳女(たらちめ)
Tarachime birth/mother
日本/2006/日本語/カラー/ビデオ/39分
監督:河瀬直美 Kawase Naomi

養母が幼少の自分を見捨てるような言葉を吐いた、と監督が声を荒げて怒る。認知症である養母へのいら立ちの声と老いた裸体を慈しむ眼差し。そして息子の出産。老いて死に近づくひとつの命と、誕生によって分け与えられたひとつの命を静かにきり結ぶ感動作。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞・河瀬直美監督の新作ドキュメンタリー映画。

先頭

12タンゴ ブエノスアイレスへの往復切符
12 Tangos: Adios Buenos Aires
ドイツ/2005/スペイン語/カラー/35mm/86分
監督:アルネ・ビルケンシュトック Arne Birkenstock

19世紀末から20世紀初頭。600万人もの人々がヨーロッパから南米へ移住し、アルゼンチンが誕生した。そして21世紀。2002年の経済破綻を受け、仕事を求める子孫たちは、祖先のパスポートを頼りに彼らの反対ルートであるヨーロッパへ向かう。渡欧を決意した女性ふたりと、かつては世界中の舞台で踊っていた老ダンサーの生き様が、祖国への慕情、哀しみや絶望が込められたタンゴの曲と強烈に絡み合う。また、アルゼンチン中から選りすぐられたミュージシャンによって演奏された数々のタンゴが聴けるのも本作の魅力のひとつ。

先頭

ワイルド・ワイルド・ビーチ
Wild, Wild Beach
ロシア、ドイツ/2006/ロシア語/カラー/ビデオ/125分
監督:アレクサンドル・ラストルグエフ、ヴィタリー・マンスキー、スサンナ・バランジエヴァ Alexander Rastorguev, Vitaly Mansky, Susanna Baranzhieva

夏のヴァカンスで人が溢れるロシアの海岸。明るい太陽のもと開放された人々は快楽、金欲、権力など欲望に目をくらませている。観光客目当てにラクダを遠路はるばる移送する写真屋、酔いどれ老女、ラップを歌う老人、女と見れば口説き回る太っちょとノッポのふたり組、プーチン大統領の訪問。混乱するロシアの今が風刺画のようにアップテンポに描かれていく。映画祭2001上映作『青春クロニクル』のヴィターリー・マンスキー監督が今作の共同監督のひとり。