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    - タイ/2008/タイ語/カラー/ビデオ/83分

    監督、脚本:パーヌ・アーリー、コン・リッディー、カウィーニポン・ケットゥプラシット
    撮影:カウィーニポン・ケットゥプラシット、パーヌ・アーリー、タンワディー・ヘーマラー、エカポン・ヘーマラー
    編集: カウィーニポン・ケットゥプラシット
    録音:パイラット・ワッディー、エカポン・ヘーマラー
    音楽:エカポン・ヘーマラー
    出演:タンワディー・ヘーマラー、エカポン・ヘーマラー
    製作:チャリダー・ウアバムルンジット、パーヌ・アーリー
    提供:ワラッド・ドーリーン・フィルム

    バンコクで働く仏教徒のジューンは、タイ南部に住むムスリムのエイクとの結婚を機に、イスラム教に改宗した。都会の生活を離れ、生活の中に根付くイスラム教の教えと慣習を覚えていきながら、2人だけの生活が始まる。対照的なそれぞれの家族に見守られ、すれ違いを乗り越えながらも、エイクとの関係を深めていく。結婚とは、家族を作ることとは? 新たな人生の旅路が、2人のまっすぐな言葉で緩やかに、そして静かに語られるロード・ムービー。



    【監督のことば】 ニューヨークの9.11同時多発テロ以来、イスラム教徒であることは、どこか不利であるだけでなく、重荷にさえなってしまった。その風潮は、ほぼ全世界に広がっている。人口の95パーセントを仏教徒が占めるここタイも例外ではない。タイのイスラム教徒は人口のわずか3パーセントであり、その大半が、マレーシアと国境を接する最南端の地域に暮らしている。2003年から南部独立派による暴力が激化し、地域が大混乱に陥ったため、タイのイスラム教徒のイメージはますます悪化してしまった。

     2006年、私たち3人、短編映画作家のパーヌ・アーリー、批評家のコン・リッディー、ポストプロダクション専門家のカウィーニポン・ケットゥプラシットは、バンコクに暮らす4人の“穏健派”イスラム教徒の男性を描いた40分のドキュメンタリー『In Between』を共同で監督した。私たちはこの作品が完成してすぐに『改宗』の構想を思いつき、ジューンという女性と出会ったことで映画が具体的な形になった。ジューンはそのとき、タイ南部サトゥーン出身のイスラム教徒のエイクと結婚したばかりだった。『改宗』の撮影は2006年9月に始まった。

     私たちは、ジューンの大きな決断に興味を持った。若く、遊ぶことが好きで、イスラム教についてはほとんど何も知らないバンコクの女性が、改宗して新しい神を信じるようになるだけでなく、まったく新しい生き方を受け入れること。それは、人生が根底からくつがえるような経験だろう。どんな新婚夫婦も、すぐに家庭生活における葛藤と直面することになるが、ジューンの場合は、南部でエイクの家族と同居という、まったく新しい環境に身を置くことで、それは倍増する。

     私たちはこの映画で、イスラム教徒であることの本質を探るつもりはなく、どんな先入観にも異議を唱えるつもりはない。ただ、辛抱強く観察を重ねれば、ひとりの個人の経験を通して、ある社会の価値観を伝えることができると信じているだけだ。


    2006年、3人は中編ドキュメンタリー『In Between』を共同監督。同作はタイ短編映画祭で2位入賞を飾る。共同監督による初の長編ドキュメンタリー『改宗』は、2008年11月にバンコクの映画館リド・シネマで商業公開され、タイを代表する映画雑誌『ビオスコープ』から年間最優秀タイ映画に選ばれた。


    - パーヌ・アーリー

    1995年にタマサート大学映画写真学科を卒業。同年からタイの映画プロダクションで録音技師として働く。2000年の『昔むかし』(YIDFF 2001)をはじめ、多数の短編映画を監督。



    - コン・リッディー

    タイを代表する英語新聞『バンコク・ポスト』に記事、コラム、映画批評を13年にわたって執筆。他にもさまざまな海外の雑誌や映画祭のカタログに寄稿し、多くの映画祭で審査員を務める。



    - カウィーニポン・ケットゥプラシット

    ラムカムヘン大学マスコミ学科卒。2001年にS. Screenheadを設立。アティット・アッサラット監督の長編映画『Three Friends』、ミンモンコル・ソナクル監督の長編映画『True Mom』で編集を担当。