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    Spiral Staircase of Harbin

    - 日本/2008/中国語/カラー/ビデオ/109分

    ディレクター、撮影:季丹(ジ・ダン)
    編集:沙青(シャー・チン)
    映像技術:水沼治久
    音声:緒形慎一郎
    音響効果:田口恭平
    コーディネーター:楊昭(ヤン・ジャオ)
    制作統括:小谷亮太
    制作、著作、提供:日本放送協会

    丘の上のマンションに住む母と大学進学を控えた娘。丘の下の長屋に住む両親と遊び盛りの息子。誰も分かってくれない十代の行き場のなさと、叱り甘やかす親の心労が空回りする。40代後半に入り、子どもの独立の予感にミッドライフ・クライシスも迎え、大人も立ち往生をする。家族ではなく自分のために生きたい、幸せはつかみ取るものなのか。速度を増す現代社会の裏で、ハルビンの空を漂う吐息を同郷の監督の眼差しが鋭く温かく捉える。NHKハイビジョン「シリーズ新的中国人 II」で2008年に放映。



    【監督のことば】 ハルビン道外区に戻ったのは30年ぶりだった。“道の外”という名前のとおり、時代のハイウェイから放り出されたような町には今も古い建物が残り、青春時代の仲間たちが暮らしている。月日だけが流れ、人生は巡っていく。ちょうど30年前、未来を熱く夢見ていた頃の私たちと同じく、今はもう彼らの子どもたちが思春期を迎えていた。

     私の人生は、彼らとまるで違って見えるだろう。遠い場所で、やりたいことをやり、我を通して生きてきた。それなのに、再会した彼らの姿は、私自身とますますオーバーラップする。使い古され衰えた、からだと心。開放されたと言われる世の中であくせく生き、調和と安定の世にあって孤独で無力だ。それは、かつて未来に対し抱いていた信頼や憧れとはまるで合わない。幸い、恐れを知らぬ若者たちはいつでも前を歩いている。門が閉ざされることはこの先、決してないだろう。

     私たちの人生にはいったい何が起こったというのだろう。この映画を通して、私は自分自身を、また自分たちの生活を見つめ直してみたい。薄暗いジャングルの奥深くにいるような今の人生を。映画は私にとって、自分自身を呼び覚ます降霊術なのである。


    - 季丹(ジ・ダン)

    1963年、黒竜江省生まれ。北京師範大学中国文学部卒業後、1988年より横浜国立大学、京都精華大学に留学。その後、アジアプレスに加わり、1994年にインディペンデントでドキュメンタリーを作り始める。その後、NHKで数々の番組が放映され、チベットの農民を描いた数本のうち『古老たちの祈り』(1999)をアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭、台湾国際民族誌映画祭に出品。YIDFF 2003には『一緒の時』(2002、小川紳介賞)のプロデューサーとして参加。2007年、釜山映画祭AND基金を受けてドキュメンタリー『ホスピス医院・空城一夢』を制作。