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標的の島 かじかたか

The Targeted Island: A Shield Against Storms

日本/2017/日本語/カラー、モノクロ/ Blu-ray/119分

監督、ナレーション:三上智恵
撮影:平田守 編集:砂川敦志
監督補:桃原英樹 プロデューサー:橋本佳子、木下繁貴
製作:ドキュメンタリージャパン、東風、三上智恵 配給:東風
www.hyotekinoshima.com

沖縄の米軍基地問題は日本の問題である、という伝わりづらい自明の事実。監督は、高江のオスプレイのヘリパッド建設、辺野古の新基地建設を丹念に取材し続け、負傷者・逮捕者を出しながらも激しい抵抗を続ける住民や、座り込みの現場に駆けつける人びとの声を伝え、問いかける。さらには自衛隊配備やミサイル基地建設が進む宮古島、石垣島の現在にも焦点を当てている。沖縄は、唄や祭りの豊かな文化の宝庫でもある。抵抗の場に欠くことのできない、権力を笑い飛ばすユーモアと反骨精神、豊穣に歓喜する伝統的な祭祀も存分に描き出す。



【監督のことば】2013年に『標的の村』がアジア千波万波部門、2015年に『戦場いくさばとぅどぅみ』がインターナショナル・コンペティション部門で選ばれ、ラッキーが二回続いたけれど、2017年は沖縄から自費で観客として山形に乗り込むつもりでした。ところが、今回は特別招待作品に選ばれたと知らせを受けてびっくり。まさかの三連続参加となりました。過去三作品の全てが、山形に集うドキュメンタリーファンの皆さんに暖かく迎えられる形になり、心からありがたく、感激しています。

 しかし、沖縄の基地をめぐる問題は、混迷・悪化の一途を辿っています。10年座り込んで反対してきた東村高江のヘリパッドは、全国から1,000人の機動隊員が投入され昨年末に完成。今年春には辺野古で新基地建設の本格工事が強行され、こちらも20年続いてきた非暴力の座り込みを腕力で排除し、逮捕、長期拘留と弾圧を強めています。

 ただ単純に、軍隊の島としてではなく、静かに平和に暮らしたい。戦後72年も耐えに耐えてきた沖縄県民の思いがなぜ届かないのか。刻々と追い込まれていく県民の姿を世に伝えるため、一年半に一作というハイペースで作品を世に出してきましたが、そのたびに思うのは、問われているのは沖縄ではないこと。また壊れていくのは、沖縄ではなく日本国そのものだということを確信します。

 特に今回の『標的の島 風かたか』は、沖縄の窮状を訴えるよりむしろ、国民主権、平和主義、民主主義、そのどれもが瓦解しつつあるこの国の危機を描き出したつもりです。戦後初めての戦死者・Aくんのニュースを聞くまでに、私たちにどのくらいの時間が残されているのか。作品の最後にそう問う七尾旅人さんの歌に、あなたはどう答えますか?


- 三上智恵

ジャーナリスト、映画監督。1987年、アナウンサーとして毎日放送に入社。95年、琉球朝日放送の開局時に沖縄へ移住。同局のローカルワイドニュース番組のメインキャスターを務めながら、沖縄の文化、自然、社会をテーマに多くのドキュメンタリー番組を制作。2010年、日本女性放送者懇談会の放送ウーマン賞を受賞。2012年に制作した『標的の村 国に訴えられた沖縄・高江の住民たち』は、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル大賞など多くの賞を受賞。劇場版『標的の村』(2013)でキネマ旬報ベスト・テン文化映画第1位、YIDFF 2013で日本映画監督協会賞・市民賞をダブル受賞。『戦場ぬ止み』(2015)がYIDFF 2015インターナショナル・コンペティション部門、釜山国際映画祭2015ドキュメンタリー・コンペティション部門に招待。現在はフリーのジャーナリスト、映画監督として活動するほか、沖縄国際大学で非常勤講師として沖縄民俗学を講じる。