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[ポーランド]

エントロピー

Entropy
Entropia

- ポーランド/2021/ダイアローグなし/モノクロ/デジタル・ファイル/10分

監督:張猷嵩(チャン・ヨウソン)
撮影:オスカー・ヤン=クルール
編集:ミハウ・ブチェク
音楽、整音:マチェイ・トベラ
ヴィジュアル・エフェクト:張猷嵩、オスカー・ヤン=クルール、ミハウ・ブチェク
提供:張猷嵩

まるで別の惑星か、もしくは地球の遥か未来の姿かのように見えるが、ここは現代のポーランド、コニンの炭鉱である。物々しく山を掘削する武骨で巨大な鉄の重機は、その場の支配者かのごとき不気味さを放ち規則正しく動き続ける。それを操作する人間の手もまた武骨だ。そして次第に機械の動きと人間の動きとは複雑に重なり、融解し、乱雑さを極めていく。一度働き出した終焉への力はエントロピー同然、不可逆的に増大するのみだ。台湾出身の監督が死にゆく炭鉱を実験的手法で記録した。(IT)



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【監督のことば】本作は、ポーランドのコニンに残るある炭鉱を記録した、実験と記憶のドキュメンタリーだ。エントロピーとは、無秩序やでたらめさを計測する単位を意味する。炭鉱は絶え間なく動く場所であり、1年365日、1日24時間つねに稼働している。想像をはるかに超える巨大な機械が大地を切り裂き、大きな穴の奥底に黒い石炭が現れる。石炭は採掘され、処理され、列車に積まれ、エネルギーという最終目的地に向かう旅に出発する。炭鉱はまた死にゆく場所でもある。炭鉱という概念の寿命はつきようとしている。コニンで働くある鉱夫が言うには、この場所はおそらく4年か5年で完全に閉鎖される。熱力学第二法則によると、孤立したシステムのエントロピーの総量は時間がたっても減少しない。孤立したシステムは、熱力学的平衡、すなわちエントロピー最大の状態に向かって自発的に進化する。エントロピーはカオスのメッセージを届けるだけではない。砂浜の砂の城が風を受けて崩れるように、すべてのものはいずれ消滅するということも教えてくれる。コニンに存在する機械のリヴァイアサンの運命と同じように、それはすでに決まったことだ。


- 張猷嵩(チャン・ヨウソン)

1992年台北生まれ。台湾の国立陽明交通大学でイギリス文学と言語学の美術学士号を取得。2017年にポーランドのウッチ映画大学に入学し、現在は映画・テレビ演出学部の4年に在学中。