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    12 Tangos: Adios Buenos Aires

    - ドイツ/2005/スペイン語/カラー/35mm(1:1.85)/86分

    監督、脚本:アルネ・ビルケンシュトック
    撮影:フォルカー・ノアック 編集:フェリックス・バッハ
    録音:ガスパー・ショイヤー 音楽:ルイス・ボルダ
    製作:アルネ・ビルケンシュトック、トーマス・シュプリンガー、ヘルムート・ G・ヴェーバー
    製作会社:フルーツマーケット文化・メディア有限会社、トレードウィンド・ピクチャーズ・プロダクション
    配給(日本国内):有限会社アップリンク

    19世紀末から20世紀初頭。600万人もの人々がヨーロッパから南米へ移住し、アルゼンチンが誕生した。そして21世紀。2002年の経済破綻を受け、仕事を求める子孫たちは、祖先のパスポートを頼りに彼らの反対ルートであるヨーロッパへ向かう。渡欧を決意した女性ふたりと、かつては世界中の舞台で踊っていた老ダンサーの生き様が、祖国への慕情、哀しみや絶望が込められたタンゴの曲と強烈に絡み合う。

     作曲家・ギタリストのルイス・ボルダが、アルゼンチン中から選りすぐりのミュージシャンを集めて数々のタンゴを披露。92才で現役のマリア・デ・ラ・フエンテ、「現在最高のタンゴ歌手」とローリング・ストーン誌で賞賛されたリディア・ボルダ、撮影直後に世を去った伝説のバンドネオン奏者ホセ・リベルテーラが出演している。



    【監督のことば】『12タンゴ』は、タンゴの魂への接近である。大げさな表現だと思うかもしれないが、つまるところは、「赤線地帯、マチズモ、女たち」というクリシェからタンゴを解放し、その本質に迫ろうとする試みだ。自国にいても未来は開けないと確信するまでに追いつめられ、故郷を捨て未知の国に可能性を求めようとする人々、それがタンゴの本質だ。ロベルト、マルセラ、ファビアナの物語は、私が今までに見聞きしたり、自ら執筆したあまたのタンゴ史やタンゴ論の考察よりも、タンゴの魂と本質について多くのことを教えてくれる。彼らのユーモア、悲しみ、宿命を帯びた精神のすべてが映画の中に入り込み、12の素晴らしいタンゴの歌詞、メロディー、ダンスのステップと結びつく。ある意味で、この映画自体も優れたタンゴであろうとする。コミカルであると同時に哀愁が漂い、詩的であると同時に力強く、そして優しさと荒々しさの両方を持ち合わせている。

     私たちの『12タンゴ』は、ドイツの映画ファンに歓迎された。そして今回、山形国際ドキュメンタリー映画祭のおかげで新たな素晴らしいスタートが切れることを嬉しく思う。日本のタンゴ・シーンは、間違いなくヨーロッパと南米以外で最大規模で、活気に満ちている。日本のみなさんが、わが国の「タンゲーロス」仲間と同じようにこの映画を楽しんでいただけることを願っている。


    - アルネ・ビルケンシュトック

    1967年生まれ。ライター、映画作家。ドイツとアルゼンチンで経済学、スペイン語、ポルトガル語、政治学を学び、南米研究で修士号を取得。1994年からフリー・ジャーナリスト、ライター、監督として活躍。これまでに公共放送用に複数の長編ドキュメンタリーを監督し、タンゴ、南米の音楽・芸術政策についての著書や研究を出版。ドイツのアートスクールと映画学校で講師を務める。2004年に製作会社、フルーツマーケット文化・メディア有限会社を設立した。監督としては、中国のドイツ人留学生を追ったドキュメンタリーシリーズと、幼稚園の先生になる訓練を受けるドイツ人兵士を扱った『Grand Format』を完成した。2008年には長編ドキュメンタリー『Chandani: The Daughter of the Elephant Whisperer』を監督予定。