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インターナショナル・コンペティション



審査員
アトム・エゴヤン
ハイレ・ゲリマ
市岡康子
アマル・カンワル
フェルナンド・ペレス

 今回も、101カ国から総計1,078の応募作品が寄せられたインターナショナル・コンペティション。すべての作品を最後まで鑑賞し「作品本位」で選ぶという選考スタイルは、第1回目から変わっていない。今年の作品募集は2010年9月にはじまり、送られてきた作品は事務局で再生等の確認を経て、10人の選考委員と数名のアドバイザーに振り分けられる。どの作品も、少なくとも2人が早送りなしに視聴し、「映画としてスクリーンに映し出される」ことを念頭におきながら、選考の場にあげる作品を吟味する。選考委員は作品が決定するまでの半年間、計200本以上の作品をほぼ毎日見続け、数回に渡る選考会で議論を繰り広げた。1,000本を越える応募作品には、年齢を重ねることを題材にしたものや、第二次世界大戦を生き抜いた人々の証言や回顧についての作品が多かった。アジア、欧米、北米からの作品が目立つものの、中南米やアフリカからの応募も増え、世界各地から作品が届いた。

 今年は、選考がペースアップする3月に東日本大震災があった。太平洋側の津波被害に愕然とし、原発の状況が明るみになるにつれ暗い気持ちになる毎日だったが、映画祭の開催に疑いを持つことはなかった。映画祭の準備をし、応募されたドキュメンタリーを観て、考えることが、今の自分にできること。選考委員それぞれが抱えた意識や不安はバラバラだったと思うが、身近に起きた未曾有の被害を目の当たりにし、改めて「ドキュメンタリーとは何か」を問いかけた。この期間に、選考委員が意見をぶつけ合い、どうしても「ヤマガタ」で紹介したいという強い想いで推したのが、この15本である。

 作品を選んでみて浮かび上がったのは「生と死」というキーワードであった。戦争での生と死、虐殺での死、愛するものを失うこと、消えゆく街……。人の営みから切り離せない生きることと死ぬことの重みを、どの作品も我々に問いかけてくれている。

 過去に山形映画祭で上映された監督の新作や、続けて応募してくれている制作者も多く、今まで山形で上映されたことのある6人の監督の新作を上映することになった。ひとりの監督の題材の捉え方や作風の変化を見続けることができるのも、20年以上続いてきた本映画祭の特色のひとつである。

 今回新たに、コンペ作品の何本かを字幕がつく前に山形市内の中高生に観てもらい、その中から彼ら自身が同世代に推薦したい作品を選んでもらうという試みも実施した。「家族」や「日常生活」という視点から、若年層にも身近に感じてもらえる作品が多いこと、地元山形でもドキュメンタリーの面白さを知ってもらえる余地がまだまだあることに改めて気づかされた。

 観る程に広がりを増す、味わい深い15本を、映画祭に参加される皆さんが1本でも多く鑑賞できますように。そして積極的に質疑応答に参加し、観た映画についてともに語り合い、新たな発見と喜びを共有できますように。

小林みずほ