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台湾特集 回到一圏:日台ドキュメンタリーの12年後


ご挨拶 馮寄台


共催:行政院文化建設委員会、台北駐日経済文化代表処


ウサギ年は跳躍せよ

 1999年のYIDFFは、台湾ドキュメンタリーにとって記念碑的な年だった。今までにない数(12本)と質の台湾作品が上映され、30人近くのゲストが台湾から来場し、ドキュメンタリー映画界に台湾の勢いを強烈に印象づけた。

 台湾中部大地震(同年9月)の生々しい衝撃を抱えた台湾のドキュメンタリストたちは、映画を通して記録することの意味や価値について、映画祭に集まった人々と討論を重ねる機会に貪欲に飛び込んだ。当時の台湾でも国際ドキュメンタリー祭が前年に始まり、国立台南藝術学院に設立された音像記録研究所では若い人たちがドキュメンタリーに特化した斬新な映像教育の現場で育っていた。個人で作れるようになったドキュメンタリー映画は、人々の生きた暮らしを表現する、芸術的で民主的なメディアとして期待されていた。

 映画祭の最終日。呉耀東監督の『ハイウェイで泳ぐ』が小川紳介賞に輝き、台湾ドキュメンタリーにとって忘れられない映画祭となった。

 あれから12年、干支をひとまわりした今年2011年における台湾ドキュメンタリーの状況はどうだろうか。政府助成制度の充実、公共放送の制作機会、商業公開の可能性も広がっているが、1999年にドキュメンタリー映画に対して明るい未来を期待した若き制作者たちは今、どういう気持ちでドキュメンタリーと向き合っているのだろうか。

 1999年のアジア千波万波はまた、日本のみずみずしい才能を輩出した年でもあった。この年に新作を上映した4名の作り手たちは12年たった今、それぞれの道を着実に歩み独自の映像制作を続けている。

 今回は、日本と台湾の11名の監督たちが “故郷”ヤマガタに集い、交流をしながら、これまでの時間を報告しあう。当時と今の作品を併せて上映し、改めてドキュメンタリストとしての未来について考える干支 ひとまわりの同窓会である。ウサギ年には、耳を澄ませ、跳躍せよ!

YIDFF東京事務局ディレクター 藤岡朝子