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やまがたと映画
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     戦前期から、教育・啓蒙・宣伝・娯楽装置として活用されてきた幻灯メディア。取扱いの簡単さ、フィルムへの直接着色、35mmロール式フィルムの使用による情報量・物語性の拡大などの利点により教育関係者の注目を集め、敗戦後にはさらなる発展を遂げ、公共施設での幻灯会ブームがもらたされた。その勢いに乗った幻灯フィルムは時には社会批判の視座を持ち、労働組合などの社会運動団体にとっても重要なメディアとなった。

     上映作品は、神戸映画資料館の協力により、同館に保管されていた1950年代初頭の幻灯フィルムや台本300点以上の中から選定。若手弁士・片岡一郎氏の巧みな話術とともに、戦後社会の空気を鋭く感じ取ることができるだろう。

    共催:早稲田大学演劇博物館・演劇映像学連携研究拠点 平成23年度公募研究「戦後映像文化史におけるオルタナティヴ的実践についての実証的研究 ―幻灯/スライドメディアの再評価及び映画・演劇界との連携の実態の検証を中心に―」(代表・鷲谷花)
    協力:神戸映画資料館


    -憂国の詩人 屈原

    Qu Yuan, the Patriotic Poet

    1952年
    製作:前進座、キヌタ・ヨコシネ・スライド
    出演:河原崎長十郎、田中靖祐、いまむらいずみ

    抗日話劇の代表作のひとつである郭沫若の『屈原』(1942)の、1952年9月の前進座による日本初演舞台を撮影、編集した幻灯版。タイトル・ロールは戦後の河原崎長十郎の当たり役の1つとなった。本作と「植民地支配への抵抗」のメッセージを共有する、同年の前進座公演『奄美大島秘史 美女カンテメ』(鈴木政男作/河原崎国太郎主演)も幻灯化されている。



    -みどりの平和

    A Green Peace

    1953年
    企画、製作:社団法人農山漁村文化協会
    出演:富野村の人たち

    戦時中の山林の荒廃のもたらす水害から村を守るために、旧時代の境界権や入会権のしがらみを越えて、植林運動に取り組む宮城県富野村の中学生たちの奮闘を、実話に基づきつつ、本人たちが出演し、現地ロケで幻灯化した作品。企画・製作は、幻灯版「山びこ学校」と同じく農山漁村文化協会(農文協)。農文協は、占領期以来、農山漁村向けの教化啓蒙や娯楽のための幻灯作品を多数製作していた。



    -山はおれたちのものだ

    The Mountains Belong to Us

    1954年頃
    製作:奥多摩山村工作隊

    1951年から55年にかけ、小河内ダムの建設阻止と、封建地主の支配からの山村解放のため、日本共産党より西多摩の山村に送り込まれた奥多摩山村工作隊製作の教宣幻灯。山村工作隊が実施した山村労働者向けの文化工作の実態を伝える貴重な現物資料である。台本・フィルム共に製作年は明記されていないが、フィルムの製造番号からは1954年頃の製作と考えられる。



    -ぼくのかあちゃん

    My Mother

    1953年
    製作:東大セツルメント川崎

    今日まで日本を代表する絵本作家・児童文学者として活躍を続けている加古里子(かこ さとし)は、1951年から東大セツルメント川崎こども会の運営に参画し、会に集まる地域の子どもたちに向けた紙芝居及び幻灯の創作活動にも取り組んでいた。低学齢児による児童画を髣髴とさせる画面と、生活綴り方に基づく台本を組み合わせた本作品は、子どもたちとの集団製作のユニークな実践例といえる。



    -われらかく斗う 激斗63日

    How We Fight: The 63-Day Struggle

    1953年
    製作:日本炭鉱労働組合

    1952年10月17日に始まる日本炭鉱労働組合(炭労)主導の63日間のストライキを、福島常磐炭鉱及び九州嘉穂炭鉱の闘争に焦点をおいて総括する、全編で90コマ近い長大な作品。配給元の日本幻灯文化協会が発行したパンフレット「労働組合の幻灯運動」(1959年)によると、本作は好評により1,000本以上プリントされ、50年代の労働組合による幻灯自主製作ブームの嚆矢となったとされる。

     


    特別企画


    - 「山びこ学校」幻灯編

    School of Echoes Magic-Lantern Screening

    企画、製作:社団法人農山漁村文化協会
    出演:山形県南村山郡山元村の人たち

    - 無着成恭原作の『山びこ学校』(1951年、上山市山元が舞台)は当時大ベストセラーとなり、劇映画も製作された。これはその幻灯版で、劇映画と違い無着本人が出演している。この幻灯版の方も当時大変売れ行きがよかったという。今回は地元の劇団員による朗読によって上映する。(弁士:伊藤尚彦)