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蜘蛛の地

Tour of Duty
거미의 땅

- 韓国/2013/韓国語/カラー/Blu-ray/150分

監督、脚本:キム・ドンリョン、パク・ギョンテ
撮影:ユン・ジョンホ、キム・ドンリョン、パク・ギョンテ、チャン・チナム
編集:キム・ドンリョン、パク・ギョンテ、ムン・ジュニョン
録音:サウンドウェイ
ナレーション:パク・ミヒョン
製作会社、配給:シネマDAL

韓国・京畿地方北部の米軍基地周辺の旧歓楽街。沈黙が支配する町に、3人の元売春婦の女性がひっそりと生きている。それぞれの口から明かされる凄絶な過去、人生を託して語られる詩的なモノローグは、己の身体とともに残された思い出を愛おしむ女たちの、心の叫びに満ちている。この跡地はほどなく取り壊されるという。一生癒されることのない傷を抱えて廃墟をさまよう彼女たちの姿は、あらゆる記憶の忘却への抵抗を伝えている。



【監督のことば】米軍基地村をテーマとした一連のドキュメンタリーを、主要人物の人生に焦点を当て、伝統的なダイレクト・シネマに近い手法で製作した後、私たちの関心は廃れかけた村の空間そのものへと移っていった。

 当初、私たちは、荒廃した基地村の写真集を記録資料のひとつとして作ろうとしていた。調査してみると、非武装地帯近辺の30以上の村が、以前は米軍基地村であったことがわかった。しかし、驚くべきは基地村のスケールの大きさだけではない。かつて強烈に存在した歴史的事実が、今ではすっかり忘れ去られているという現実が私たちを打ちのめしたのだ。古くからの村民たちの、気乗りのしない、バツが悪そうな反応や、過去についての羞恥に満ちたコメントは、この廃れた地やその歴史に新たな視点を与えてくれた。ゆえに、私たちが「現状確認」中に廃墟の周りやからっぽの通りをさまよう幽霊の姿を想像したことはごく自然で当然なことであった。

 とはいえ、空間そのものが何かを語りかけてくることはない。結局、空間とは、そこにいる人間の記憶と結びつくものなのだ。当初の計画では、取り壊される前の自分の家をさまよう死んだ孤児を描く予定で、それは3人の異なる人物として表現されるはずだった。だが、長い時間をかけて築いた関係性のおかげで、私たちは彼女らとともに別の映画の可能性を試みることができた。3つの異なる倫理的手法によってそれぞれの登場人物は描かれ、空間は彼女たちの毎日の生活と記憶のなかに心理的に出現している。『蜘蛛の地』は、歴史の証人である空間、そして生き抜いた女性たちへのオマージュである。

*とりわけ、近年亡くなった韓国人とアメリカ人の親を持つ2人(パクが監督した『There is』で描かれたミョンスと、2007年に撲殺されたジョンチョル)が私たちの心を埋め尽くしていた。


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キム・ドンリョン
パク・ギョンテ

キム・ドンリョンは1977年生まれ。梨花女子大学英語英文学科卒。韓国国立映画アカデミーで映画製作を学ぶ。米軍基地周辺の歓楽街で働く外国人女性たちを描いた長編ドキュメンタリー『アメリカ通り』(2008)を監督し、YIDFF 2009で小川紳介賞を受賞。パク・ギョンテは1975年生まれ。東国大学で社会学の修士号を取得。『Me and the Owl』(2003)、『There is』(2006)といったドキュメンタリーを通じて、米軍の基地村で生き延びてきた人々への親密なまなざしを確立する。2人は2011年からパリで学び、現在は韓国とフランスを行き来しながら、場所、暴力、記憶を描いた視聴覚芸術プロジェクトに共同で取り組んでいる。