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河北台北

Hebei Taipei
河北台北

- 台湾/2015/中国語/カラー/DCP/88分

監督、編集、製作、提供:李念修(リ・ニェンシウ)
撮影:劉士毅(リウ・シーイー)、李念修

1927年に中国河北省で生まれ、幼い時に父親を殺された後は、故郷の村を逃れて各地を転々とした李忠孝(リ・チャンシャオ)。国共内戦では国民党軍に参加し激戦をくぐり抜け、敗戦後は共産党に転身、援軍として送り込まれた朝鮮戦争では捕虜となる。その後、国民党政府が率いる台湾へ渡ってからは一度も故郷に戻っていない。激動の人生を生き抜いた李の過去を、娘である監督が丹念に聴き取り、その記憶を頼りに父の足跡を辿る。口が悪く傍若無人だが、どこか憎めない男の波瀾万丈の回想録。



【監督のことば】娘として生まれた私にとって、父は理解不能な高い山のような存在だった。

 ことの発端は、父の物語を伝えていくと本人に約束したことにある。それから私は、15年の歳月をかけて、父の生活を記録し続けた。

 撮影をスタートしたばかりの頃、私は父が語る人生の経歴はすべてフィクションではないかと疑っていた。しかし、父が成し遂げられなかった帰郷の旅――台北から中国・河北省、山西省、そして韓国までの5,000キロを超える撮影の旅――を通して、何も知らなかったのは私自身だったことを強く認識したのだった。

 旅のなかで、私たちは激変する時代の流れを感じ、消えていく先人たちの足跡を目の当たりにした。しかしそれは、埋められた井戸が、かつてそこから水が出ていた事実などなかったかのように、忘れ去られていく光景だった。それだけではない。時間は命、老い、病気、死を決して手放してくれない。そしてそれを誰も止めることはできないのだ。

 私たちに自分自身の歴史を伝えてくれた皆さんに感謝したいと思う。時代の流れの一端を、後世の人々に垣間見せてくれた。そして娘に自分の両親を知る機会を与えてくれた父と母にも感謝したい。今回の撮影を通して、疎遠になっていた親子の関係はグッと近づいた。「親孝行をしようと思い立ったとき、すでにその親はいない」というのは、実に無念なことだ。でも、父のこの高い山は永遠に私の心の中にあり、これからどう生きていくかを知るためにも、自分自身の由来を知ることが必要であることを彼は悟らせてくれた。


- 李念修(リ・ニェンシウ)

ドキュメンタリーの手法を取り入れた短編映画『闖』(2009)の実験的な映像表現が高く評価され、テルアビブ国際学生映画祭および台湾金穗獎にノミネートされる。また編集技師として、『被遺忘的時光』(2010)、『青春ララ隊』(2011、YIDFF 2011)、『MAYDAY 3DNA 五月天追夢』(2011)、『不老騎士』(2012)、『共犯』(2014)など、様々なドキュメンタリー映画、長編映画に参加した。2010年、ドキュメンタリー映画『街舞狂潮』(2010)が第47回金馬奨最優秀編集賞にノミネートされ、その頃から脚本の創作も始める。長編映画『光にふれる』(2012)では、編集技師および脚本家として参加。2000年に本作の記録を開始し、その撮影期間は15年の長きにわたった。