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YIDFF 2015 オープニング作品
訪問、あるいは記憶、そして告白

Visit or Memories and Confessions
Visita ou Memórias e Confissões

- ポルトガル/1982/ポルトガル語/カラー/35mm/68分

監督、脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影監督:エルソ・ロック
カメラ:アレシャンドレ・サントス、エミリオ・カストロ、マリオ・ド・オリヴェイラ
編集:マノエル・ド・オリヴェイラ、アナ・ルイーザ・ギマランイス
録音:ジョアキン・ピント、ヴァスコ・ピメンテル
音楽:ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」
記録:ジュリア・ブイゼル
整音:ジャン=ポール・ルブリエ
声:テレーザ・マドルーガ、ディオゴ・ドリア
台詞:アグスティーナ・ベッサ・ルイス
美術:マリア・イザベル・ド・オリヴェイラ、マヌエル・カジミロ
出演:マノエル・ド・オリヴェイラ、マリア・イザベル・ド・オリヴェイラ、ウルバノ・タヴァレス・ロドリゲス
協力:ポルトガル文化省、ポルトガル映画院
製作補:ジョゼ・マヌエル
製作:マヌエル・グアニーリョ
製作会社:Cineastas Associados
提供:Cinemateca Portguesa

映画とは芸術ではない。映画とは人生ではない。
しかし、まさにそのふたつの間に位置するものだ

――ジャン=リュック・ゴダール、マノエル・ド・オリヴェイラ

映画製作の借金を返済するために、長きにわたって過ごしたポルトの自宅を手放さざるを得なくなったオリヴェイラが、1982年に制作した自伝的な作品。撮影以後、自らの死後に発表するように言づけてシネマテーカ・ポルトゲーザに預けられていたが、2015年5月、生まれ故郷のポルトに続いてリスボンで上映され、カンヌ国際映画祭で初めて国際的に紹介された。

 本作は、ポルトに1942年に建てられて以来、40年もの間、自身が暮らしていた家、自分の家族、映画に情熱を傾けた人生を、オリヴェイラ本人が辿りゆく作品である。アグスティーナ・ベッサ・ルイスのテキスト、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」に誘われながら、さまざまに彩られた記憶が、オリヴェイラの映画的空間を構築していく。

 今回の上映にあたっては、監督のご遺族をはじめとして、シネマテーカ・ポルトゲーザの館長ジョゼ・マヌエル・コスタ氏、ポルトガル大使館の協力を仰いだ。本作は、妻のマリア・イザベルに捧げられている。



-ニース、ジャン・ヴィゴについて

Nice, à propos de Jean Vigo

フランス/1983/フランス語、ポルトガル語/カラー、モノクロ/Digital BETACAM(原版:16mm)/58分

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
助監督:フランソワ・エドゥ
撮影:ジャック・ボカン
編集:ジャニーヌ・ヴェルノー、フランソワーズ・ベニエ
録音:ジャン=ポール・ミュゲル
照明:クロード・プゼ
製作:イヴ・ヴァルロ
製作会社、提供:Institut National de l'Audiovisuel (INA)

フランス国立視聴覚研究所(INA)によるテレビ・シリーズ番組「フランスへの視線」の一篇として制作された作品。オリヴェイラは、当時、自分の息子で画家のマヌエル・カジミロが住んでいたニースを、ギャンブルやビーチに代表される観光地としての側面と、歴史的かつ文化的な側面との対比から描く。それはまた、時代を超えて共通するスタイルと精神とを浮かび上がらせるためでもあるだろう。モノクロで撮影された、ジャン・ヴィゴの『ニースについて』(1930)が、オリヴェイラの作品自体に重なり合う。


マノエル・ド・オリヴェイラ(1908−2015)

1908年、ポルトガル第2の都市ポルトに生まれる。大学を退学後、1920年代にエキストラとして映画に出演、31年、23歳の時に無声の短編ドキュメンタリー映画『ドウロ河』で監督デビュー。42年に初の長編映画『アニキ・ボボ』を制作。その後、60年代にかけて、サラザール政権による独裁体制下で映画の企画が成立せず、農業に従事しながら、短編を中心に映画を撮り続ける。サラザール死去後、70年代にヨーロッパで注目を集め、80年代以降、ほぼ1年に1本のペースで作品を発表。85年、410分の超大作『繻子の靴』が出品されたヴェネチア国際映画祭で特別金獅子生涯功労賞を受賞、91年には『神曲』で同映画祭の審査員特別賞に輝く。その後も、カトリーヌ・ドヌーヴとジョン・マルコヴィッチを主演に迎えた『メフィストの誘い』(1995)や、イタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニの遺作となった『世界の始まりへの旅』(1997)などを発表し、日本国内でも配給された。2003年、国際シンポジウム小津安二郎生誕100年記念「OZU 2003」の際に来日。『クレーヴの奥方』(1999)でカンヌ国際映画祭審査員賞、08年に同映画祭のパルムドール名誉賞を授賞。100歳を超えた後も、『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)や『アンジェリカ』(2010)、『家族の灯り』(2012)を制作。現役世界最高齢の映画監督として知られていたが、2015年4月2日に死去。106歳。2014に制作された、ウィーン国際映画祭の予告編『Chafariz das Virtudes(英題:The fountain of virtues)』と、ヴェネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティションで上映された短編『O Velho do Restelo(英題:The Old Man of Belem)』が最後の作品となった。