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すべては終わりから始まる

It All Started at the End
Todo comenzó por el fin

- コロンビア/2015/スペイン語/カラー/Blu-ray/208分

監督、脚本、製作、提供:ルイス・オスピナ
撮影:フランシスコ・メディナ
編集:ルイス・オスピナ、グスタヴォ・ヴァスコ
録音:イサベル・トレス
エクゼクティブ・プロデューサー:サシャ・キンテロ
出演:ルイス・オスピナ、アンドレ・カイセド、カルロス・マヨロ、ベアトリス・カバレロ、ヴィッキー・エルナンデス、サンドロ・ロメロ、カレン・ラマッソンヌ、リナ・ゴンザレス

『すべては終わりから始まる』は、都市名サンティアゴ・デ・カリに由来する「カリ・グループ」ないしは「カリウッド」と呼ばれていた、ルイス・オスピナをはじめとする映画狂(シネフィル)たちのグループの自画像とも言うべき作品である。彼らは、1970年代から80年代にかけて、セックス、ドラッグ、ロックン・ロールの嵐が吹き荒れ、歴史的に混迷期を迎えていたコロンビアのただなかで、のちにコロンビア映画史の礎となるような作品群をもがきつつ生み出そうとしていた。本作は、制作期間中に重病に陥ったオスピナが、病床で自らカメラを廻すという点で、「個人映画」「日記映画」とも言えよう。映画自体の制作プロセスは、病状に重なり合う。そして、かつて映画を志した若者たちのなかで、生き残った者の物語でもある。



-リメイク、リミックス、リップ・オフ

Remake, Remix, Rip-off

ドイツ、トルコ/2014/トルコ語、ドイツ語/カラー/Apple ProRes File/96分

監督、脚本、編集:ジェム・カヤ
撮影:メリエム・ヤヴーツ、タン・クルトテキン
録音:グッツェン・アティラ、オズカン・ジョシュグン、エムラフ・ユルドゥルム、ギョクハン・クルタシュ、オルチン・インジェオール
音楽:ANADOL
音声:クレメンス・ニュルンベルガー
出演:メムドゥフ・ウン、クント・トゥルガル、ジオヴァンニ・スコンヤミルロ、ムラット・オズジャン、ユルマズ・アタデニズ、ビリセン・カヤ 他
製作:ヨッヘン・ラウベ
共同製作:ZDF、Das kleine Fernsehspiel、Sommerhaus Filmproduktionen、Otomat、Cine+
製作会社、提供:UFA Fiction

1960年代から70年代にかけてのトルコは、世界の映画産業のなかで、最も製作本数の多い国のひとつであった。活況を呈したこの時代のトルコ映画は、(イスタンブールのベイオール地区の通りの名前から)「イェシルチャム」と呼ばれ、ネタが無くとも制作が続けられたのだ。じっさい、脚本家や映画監督たちは、需要に応じて、他の映画の台本をそのまま写し、世界中の映画をリメイクしていた。西部劇のヒット作があれば、そのトルコ版があるように、『ターザン』、『ドラキュラ』、『オズの魔法使い』、『ランボー』、『スーパーマン』、『スターウォーズ』の自国版がトルコには存在する。短い制作日数、低予算ながらも、トルコの観客の趣味にローカライズされたこれらの映画は、アナトリア地方の片田舎で大きな成功を収めた。機材と予算が足りない分は、カメラの前も後ろも巨大なマンパワーで補うのだ。セム・カヤの試みは、こうしたトルコのコピー文化を考察し、映画産業がどのようにオリジナル作品を換骨奪胎したのか分析するだけにとどまらない。トルコの歴史において重要な、国際化や検閲、テレビの到来といったテーマと映画産業との関係に、映画は迫っていく。



-僕と兄

Me and My Brother

アメリカ/1969(再編集版:1997)/英語/カラー、モノクロ/Apple ProRes File(原版:35mm)/95分

監督、撮影:ロバート・フランク
脚本:ロバート・フランク、サム・シェパード、アレン・ギンズバーグ、ピーター・オーロフスキー
編集:ロバート・フランク、ヘレン・シルヴァースタイン、ボブ・イーストン、リン・ラトナー
出演:ジュリアス・オーロフスキー、ジョゼフ・チャイキン、クリストファー・ウォーケン、ジョン・コー、アレン・ギンズバーグ、ピーター・オーロフスキー、ヴァージニア・カイザー、ナンシー・フィッシュ、シンシア・マカダムス、ロスコー・リー・ブラウン、セス・アレン、グレゴリー・コルソ
製作:ヘレン・シルヴァースタイン
製作会社:A Two Faces Company Production
提供:The Museum of Fine Arts, Houston

ロバート・フランクの長編第一作。ビートニクの詩人アレン・ギンズバーグ、当時、彼と同棲していたピーター・オーロフスキー、その兄のジュリアスを記録したドキュメンタリーを、フィクションの枠組みのなかに組み込もうとする作品。現実と非現実の状況が絶えず入り混じり、カラーとモノクロの映像との間を揺れ動きながら、映画は、緊張型の統合失調症を病むジュリアスの内面と外面世界を描く。彼は、自分の周りの世界を静かに観察するが、外部との繋がりを回復できない。統合失調症というテーマに加えて、本人や他人によってジュリアスが演じられ、シネマ・ヴェリテのような手法でインタビューが行われるなど、「演じる」こと自体が強調される。フレームを意識させるようなフランクの演出とも相まって、ドキュメンタリーとフィクション、ないしはメタ・フィクションの境界や、実在と非在とのあいだを私たちに突きつける。



ジャン=リュック・ゴダール、さらけ出された無秩序

Jean-Luc Godard, Disorder Exposed
Jean-Luc Godard, le désordre exposé

- フランス/2012/フランス語/カラー/Apple ProRes File/64分

監督、脚本:セリーヌ・ガイユール、オリヴィエ・ボレール
撮影:ドゥニ・ゴベール
編集:オレリアン・マニヤ
録音:ロラン・トマ
音楽:カミーユ・ファーブル
整音:ジョスリン・ロベール
出演:アンドレ・S・ラバルト
製作:ラファエル・ミレー
提供:Institut National de l'Audiovisuel (INA)

2006年5月、パリのポンピドゥーセンターにおいて、ジャン=リュック・ゴダールによる展覧会「ユートピアへの旅」が開催された。本作品は、ゴダールの長年の友人であるアンドレ・S・ラバルトの思考を手掛かりにして、廃墟と化した展示物、映画作品、未公開のフッテージ映像を巡りつつ、「無秩序」にならざるを得なかった展覧会が、ゴダールの映画的発想自体の核を成すことを示そうと試みる。それは、新たなゴダール像への旅ともなるだろう。



-映画

A Movie?

日本/1971/日本語/パートカラー/8mm/31分

監督、撮影、編集:森田芳光
出演:森田芳光、峰友秀、勝山節子
提供:森田芳光事務所

自主映画を制作していた森田芳光にとって、映画を撮ることへのマニフェストであり、映画とは何かという、自分自身そして観客に対する問いでもある作品。劇中に登場する森田が、ラブロマンス、任侠映画、政治映画など、あらゆる映画のヴァリエーションを演じながら、映画の概念を問い、新しい映画を模索する。「私はこの映画を観ているあなたに、映画に対する考えを確認したい。奥村昭夫の『狂気が彷徨う』のように、あなたは狂気を感じるか。月光仮面を自分がやってみたくはないか。大島渚は好きか。映画料金は高すぎると思うだろう。俺たちの映画の表現の場が無さ過ぎはしないだろうか」。